「多様性」をどう定義するか、どう計測するか

 ただ、この点に立ち入る前に考えなくてはならないポイントがあります。それは「そもそも多様性とはなにか」ということを定義すること、そして定義した多様性を「どう採用選考において測るのか」、ということです。

 これは大きな壁でした。それまで自前主義で、トライアンドエラーを繰り返しながらやってきた私たちの採用手法の中には、とてもその答えはなかったのです。

 多様性を測るには、これまで行ってきた面接という手法では限界があります。また、測るべき能力のバリエーションと高さを考えたときに、そもそもその能力を持ち得ない面接官が、その能力を測るのは容易ではありません。

 おそらく、これらを測るためには適正検査のような「客観的なアセスメントツール」が不可欠になるのではないか、ということまでは想像がつきましたが、既存の適正検査を分析してもその解にはたどり着きませんでした。

 結局至ったのは、自社独自のアセスメントツールの開発が必要ではないか、ということ。自分たちの力だけでは、多様化を定義し、判断することはできません。

 そこで出てきたアイデアが「アカデミックの知見を取入れること」でした。とはいえ、そうした分野の学術関係者に特別なツテがあったわけではありません。

データに基づいた採用活動の開始

 どう進めていくべきか迷う中で、あるメルマガに目が止まりました。それは、社会科学の研究知見と分析能力をもとに組織の改善サービスを提供しているビジネスリサーチラボの伊達洋駆さんのメルマガで、産学連携をテーマにされていました。

 同社は実務にアカデミックの知見を取り入れようとするべく、伊達さんが起業した会社で、まさに、私たちが考えていた、採用にアカデミックの知見を取り入れる、ということにピッタリの相手でした。

 早速伊達さんにコンタクトをとり、相談に行くことにしたのです。そしてお会いしてみると、伊達さんにとっても、「多様性を測る」ということを実現するため、採用活動に科学的な根拠を持つ要素を取り入れたいという私たちのような存在は待ち望んでいた相手だというではありませんか。