日本社会で幸福になるには「3つのインフラ」が必要だ

作家であり、金融評論家、社会評論家と多彩な顔を持つ橘玲氏が自身の集大成ともいえる書籍『幸福の「資本」論』を発刊。よく語られるものの、実は非常にあいまいな概念だった「幸福な人生」について、“3つの資本”をキーとして定義づけ、「今の日本でいかに幸福に生きていくか?」を追求していく連載。今回は幸福になるために必要な「インフラ」について考える。

幸福の3つの条件は
「自由」「自己実現」「絆」

 幸福について語るのなら、まずは「幸福」を定義しなければなりません。ここではそれを家にたとえてみます。

 幸福が主観的なものであるように、「住みたい家」を訊かれたとき、ひとはそれぞれ異なる建物をイメージするでしょう。ヨーロッパのお城のような大邸宅、SF映画に出てくるような超ハイテクの家、木のぬくもりを活かした伝統的な日本建築……なかには「管理が面倒だからマンションでいい」という現実的なひともいるかもしれません。どの家がすぐれているかの序列がつけられない以上、「どれもいい家」としかいいようがありません。

 しかしひとつだけ、共通することがあります。夢のマイホームがいきなり倒壊してしまえば、なにもかもだいなしです。構造計算書を偽装したり、杭打ちデータを偽造したマンションが大きな社会問題になりましたが、よい家はしっかりとした土台の上に正しい設計で建てなければならないのは基本中の基本です。

 幸福も同じように、土台の上に正しく設計すべきものです。この土台のことを、ここでは「人生のインフラストラクチャー(下部構造)」と呼びます。かんたんにいえば、「幸福の条件」のことです。

 ところが巷にあふれる「幸福論」のなかで、人生のインフラについて論ずるものはほとんどありません。これではまるで、土台を無視して、家の間取りやインテリア、あるいは食器棚に並べる皿のブランドに頭を悩ますようなものです。

 脆弱な土台の上に無理矢理建てた家は、いずれは崩れてしまいます。土台のないところで「幸福な家族」をいくら演じてみたところで、やがて破綻してなにもかも失ってしまうでしょう。