これに対して万葉は大反発。築地と豊洲、わずか2キロメートルしか離れていない場所に「食や市場に関連した、東京を代表する集客施設」がそれぞれ誕生すれば、「バッティングしてしまい、集客はおろかテナント誘致にも大きな影響が出る。事業採算性が見込めない。そもそも公募時の前提条件と大きく異なることになったことに対する説明が全くない」(高橋会長)。こうした理由から万葉は、小池知事に説明回答を求める文書を送った。

工期の延期で投資額は
20億~30億円上振れ

 高橋会長は「当初見積もった総投資額180億円から、工事の延期などですでに20億?30億円上振れしている。新しく人を採用したり、テナント募集も進めたり、多方面で努力してきたのに…」と憤りを隠さない。

 万葉は、写真現像業を営んでいた高橋会長が1997年、東京・町田に日帰り温泉を出店してから温泉ビジネスを本格化。旅館やホテルの買収も進めるなどして、今では北海道から九州まで15の日帰り・宿泊温泉施設を展開する。

 豊洲開発に手を挙げた理由を「(写真業から数えて)創業70年を迎える2030年を見据えて、新たなことに挑戦するチャンスだと思った。日本の素晴らしい食文化と、風呂文化の両方を世界に発信できるのは我々しかいない」(高橋会長)と鼻息荒く語る。豊洲施設はまさに社運をかけたプロジェクトなのである。

 こうした思いを共有し、千客万来プロジェクトを率いるのは、会長の子息で、新規開発担当の高橋眞己専務。眞己専務もまた、「小池知事は、自分の目で募集要項や選定経緯の資料を読み直してほしい」と訴える。

 千客万来はそもそも、築地場外市場にある商店の“受け皿”としての意味もあった。しかし、ただ単に移転するだけでは採算が取れないため、他の飲食・物販テナントを誘致して、江戸の街並みを再現した商業棟に集積。さらに24時間営業の温泉とホテルを設けることで、国内外の観光客と市場関係者、双方に魅力ある施設にしようとしていたのだ。