「オレが死ねばローンは保険で
なくなるから一括返済しない」落とし穴

 毎月の赤字がイヤになり、一括返済をしようと思っても、70歳を超える返済期間で組んでいると、ローン残高はたっぷりあり、とても老後資金で一括返済しきれない可能性が高い。

 そこで多くの男性は次のように考える。

「ローン返済中に死亡すると、保険(団体信用生命保険)でローンがゼロになる。ローンは75歳まで続くけど、オレは75歳まで長生きするとは思えない。一括返済した後に死んでしまったらお金がもったいないから、ぼちぼち返していこう。ストレスの多い業界にいたから、60代のうちにきっと死んじゃうな。うん、きっとそうだ」

 男性の多くは「男は早く死ぬ。だからオレも早く死ぬはずだ」と言う。確かに平均寿命は女性比べて男性のほうが短いが、個別にはローン返済中に死亡するかどうかは誰にもわからない。

「ストレスの多い業界」というのも、男性が使うお約束の言葉。どの業界の人も判で押したように「うちの業界はストレスが多いから早死にする」と言う。どの業界でも60代でお亡くなりなっている人は、全体のごく一部なんですけれどね。

 ローン返済期間中に団体信用生命保険が支払われることもなく(=死亡せずに)70歳を超えて返済が終了すると、多額の赤字補てんにより老後資金はかなり減っているはずだ。その後、夫が亡くなると、残された妻は遺族年金が中心の生活になり、収入はさらに激減する。

 夫死亡は妻の収入が大きく減るからこそ、老後資金はより重要になるのだ。長年のローン返済のために心許ない金額に減ってしまっていると、妻はどうすればいいのだろう。男性は、遺された妻がひとり分の年金収入だけで暮らしていくことは困難であることを知っておかなくてはならない。

「宝くじで1億円当たった人の末路」本は、人と違った人生を歩んでも大丈夫ですよ~、同調圧力に負けずに自分の望むことをやりましょう、とさわやかに締めくくられている。では、本コラムの締めくくりは? 残念ながら、さわやかには終われそうにない。

「みんな35年返済にしている」といった「同調圧力」の言葉に乗らないこと。ささやく住宅の売り手も悪いが、「末路」を想像せずになんとなく乗ってしまう借り手も悪い。住宅ローンこそ、「同調」せずに、自分の場合はどうなのかをプランニングしなくてはいけない。住宅ローンの返済期間は、長くするほど借金は多額になり、老後貧乏に近づくということを肝に銘じておこう。

((株)生活設計塾クルー取締役 ファイナンシャルプランナー 深田晶恵)