古今東西、遊び道具は数あれど、「ハンドスピナー」ほど、“いま”“なぜ”人気を博しているのか合点がいかない玩具は類を見ないかもしれない。丸みを帯びた手裏剣のようなフォルムで、基本的には親指とその他いずれかの指で中心を挟み、外周をくるくると回すだけ。そんな極めてシンプルな玩具が、世界中で爆発的に愛好者を増やしているという。(フリーライター 末吉陽子)

ブームに火をつけたのは
アメリカのビジネスパーソン

 子どもだけではなく、大人も巻き込んでブームを巻き起こしているハンドスピナー。軸となるボールペアリングを中心に外部が回るという単純な構造だが、その人気ぶりは米国の学校では持ち込み禁止令が出るほどだという。

片手が使えなくなるからか、スマホ中毒緩和やタバコの本数減に役立ったという意見も寄せられるハンドスピナー。ハマる、ハマらないが、人によってくっきり分かれる玩具なのだという

 極めて地味な玩具がなぜここまで人気になったのか、秘密を探るべく訪れたのは、自身もハンドスピナーの謎な面白さに魅了されたと語る日本ハンドスピナークラブの山本智也代表。ハンドスピナーの誕生の背景は意外なものだった。

「1993年に米国フロリダ在住のキャサリン・ヘッティンガーさんが、重症筋無力症を患ったことをきっかけに、娘と遊べる玩具として開発しました。ライセンスフリーになってからは医療用の道具として、2005年以降は多動性障害の患者さん向けに、手持ち無沙汰を解消するために用いられてきました」

 もともとは医療用玩具の色合いが濃かったようだが、それがなぜ世界的なムーブメントにつながったのか。実は今のブームには前兆があったという。

「16年9月に米国で『フィジェットキューブ』というサイコロ型の玩具がリリースされ、クラウドファディングで6億8000万円を集めました。米国はクラウドファンディングが集まりやすいお国柄ではあるんですが、ここまで多額のお金が集まることは珍しくて話題になりました。サイコロみたいな玩具になぜお金が集まったのかといえば、6面サイコロの面のそれぞれに6種類の仕掛けを施した『フィジェット』と呼ばれる手持ち無沙汰解消をコンセプトに打ち出していたからです」

ハンドスピナーに先駆けてヒットした「フィジェットキューブ」。クラウドファンディングで6億8000万円を集めた

 これが多忙を極めるビジネスパーソンの心を捉え、フィジェット旋風が巻き起こることに。「手持ち無沙汰を解消するグッズが時代に求められている」という気づきのきっかけとなるリリースだったと山本氏は考察する。

「その後、16年12月に米国の中高年エグゼクティブ向け雑誌『Forbes』に、フィジェットブームが来ているという文脈の中で、ハンドスピナーが取り上げられ、今年注目のアイテムとして紹介されました。子どもではなく、ビジネスパーソンが火付け役になったという点もハンドスピナーの特筆すべき点ではないでしょうか」