蕎麦屋で味わう下町の情緒と人情
巣鴨では温かな接待が待っている

 厨房には父親の正治さん、フロアには母親の理恵子さんがいた。菊谷家の家系は神田、日暮里、巣鴨と居を移してきたが、下町の人情をもらい、育てながら代を生きてきた。今は先代の正治さんが、羅紗の手作りの温かな肌合いに込められた下町情緒を客に味わってもらおう、と息子の仕事をその横で見守る。代々受け継がれてきた人情は、客の気持ちに滲み入るように届くはずだ。

巣鴨「菊谷」――“利き蕎麦”でちょんと摘む肴、蕎麦屋の本懐ここにあり(写真右)トマトの蜜煮と後ろはうどのおひたし。料理も内容を充実させた。(写真左)・蕎麦屋の定番の出し巻きも客のオーダーの声が必ずかかる。

 取材中、「蕎麦難民を助けて」と馴染み客が飛び込んできた。「菊谷」は、お昼から夜まで休憩無しの通し営業だ。蕎麦屋は、にじよじ※4(2時~4時)が粋だというのが江戸からの習い。その江戸の蕎麦屋のスタイルを通そうとしている。

 お昼を食べ損なったのだろう。その馴染み客はいくつかの蕎麦屋を訪ねて回り、ここにたどり着いたに違いない。

「ゆっくりしていってよ」と、フロアの理恵子さんから声が掛かる。巣鴨の蕎麦屋では特別温かな接待が待っている。

※4 にじよじ:老舗などではかつては昼から夜までの通し営業が普通だった。中休みの頃の2時から4時の間が比較的客が少なくてゆっくりできる。常連や仕事が午前中に終わった人がまったりと蕎麦屋酒を楽しむ風景をいう言葉。

「菊谷」
●営業案内
巣鴨「菊谷」――“利き蕎麦”でちょんと摘む肴、蕎麦屋の本懐ここにあり
・住所 東京都豊島区巣鴨4-14-15
・電話 03-3918-3462
・営業 11:30~21:00(LO・20:30) 定休・火曜(祝日や縁日(4の付く日)は営業、翌週月曜振替休)、予約可(開店11時半及び16時以降)
・HPはこちら
●おすすめ:野菜懐石と蕎麦がついた新野菜料理コースは3500円、鴨鍋コースは4000円。2種盛り利き蕎麦(1150円)もいいし、手空きには3種盛り(1500円)にトライしたい。
●酒・料理:日本酒は5酌(半合)で利き酒を。酒のあてには、お任せ2品盛り550円、3品盛り750円。手空きには2品盛り、3品盛りの価格で4~6種類に増やしてくれることも。
●訪問:テーブル席がメインなので6人の宴席にも対応できる。4人位の接待や会合がまったりしてほどよい。
●地図こちら


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巣鴨「菊谷」――“利き蕎麦”でちょんと摘む肴、蕎麦屋の本懐ここにあり

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