どの国にとっても、自国の平和、安全が第一だから、同盟には、もともと他国を自国の防衛や権益確保に利用しよう、との魂胆が隠されているのが普通だ。

 冷戦時代には、米国は、もしソ連軍が西ドイツに侵攻すれば、戦術核兵器を西ドイツ領内でも使うことを考え、1960年代から在独米軍に、口径155mm、最大射程がわずか15km弱のM109自走砲用のMK48核砲弾が配備され、80年代には中性子砲弾W82に更新された。

 戦争になれば、西ドイツ国民は米軍の核で殺されるところだったが、それはソ連の西欧支配を防ぎ、ひいては米本国を守るためにやむをえない犠牲と考えられていた。

 ソ連の東欧諸国との同盟関係も同様で、米軍主体のNATO軍をソ連からできるだけ遠ざけておき、戦争になれば東欧を前哨陣地とする狙いだった。

 また1980年代の米国は「水平エスカレーション」戦略を考えていた。これは数的には優勢なソ連軍が西欧や中東に侵攻すれば、米軍側は優勢な太平洋正面で攻勢に出て、ソ連の戦力を極東に割かせよう、とするもので、ソ連の戦力を吸収させられる日本はたまったものではなかった。

 小国が大国と同盟を結ぶのはもちろんメリットもある。大国が小国と対立し、戦うか否かを考える際、その背後に控える他の大国が出て来る可能性を考えて穏便にすますことはあり得るし、戦いになった場合に援軍や物資の援助を得て助かる場合もある。

 一方、米国に求められてベトナム戦争に参戦した韓国などや、第2次世界大戦中に同盟国だったドイツに対ソ戦への出兵を迫られ、無益な戦争に巻き込まれて多くの犠牲者を出したハンガリー、ルーマニアなどの例もあるから、同盟にはリスクもあり、一長一短だ。

 グラム上院議員が言う「トランプ大統領の発言」が、単にタカ派議員の妄言に調子を合わせただけなら、真剣に案ずるまでもないが、北朝鮮の弾道ミサイルの射程が延び、精度や即時発射能力などの性能も急速に向上、米国に脅威が及ぶにつれ先制攻撃を唱える米国会議員はグラム氏以外にも現れており、さらに増えることも考えられる。

北のミサイル、米の脅威に
米国内で再び「強硬論」

 7月28日に発射された「火星14」が米本土に脅威であるのは事実だ。このミサイルは47分も飛び、最大高度3700km余に達した。

 旧ソ連の大型ICBMSS18は重量が200t以上もあったから加速が遅く、米国まで1万1000kmを飛ぶのに約45分を要した。米国のICBMはソ連へ約30分で到達した。それと比較すると、「火星14」の飛翔時間47分は長い。ほとんど真上に向けて発射したから、今回の射程は998kmだったが、通常のICBMの軌道(最大高度1000km程度)で発射すれば、射程は1万kmに達すると考えられる。

 米国本土のおよそ西半分、ロサンゼルス、シカゴなどが射程に入るから、米国の議員は強硬論に傾きがちとなる。