ジェットエンジン付の大型グライダーである無人偵察機「グローバルホーク」はカメラ、レーダー、送信機を付け、高度2万m近くで30時間以上飛べるから、常に数機を北朝鮮上空で旋回させておけば発射機が出てミサイルを立てている状況を撮影できるだろう。 だが低速で一定の地域上空で旋回していれば、北朝鮮が持っているソ連製の旧式対空ミサイルも約3万mの高度に達するから、簡単に撃墜される。公海上空から斜め下を監視するのでは、内陸の山間部の谷間に出てきた弾道ミサイルは発見できない。

「米国第一」の予防戦争で
「認識が一致」しては大変

 安倍首相は7月31日、トランプ大統領と約50分の電話会談をした後、「さらなる行動を取って行かねばならない、との認識で完全に一致した」と語った。だが「アメリカファースト」の予防戦争を考える人と「完全に一致」されては国の存亡に関わる。

 8月3日の内閣改造で防衛相に再任された小野寺五典氏は「敵基地攻撃能力」の保有に積極的で、グラム議員と考え方は合致する。安倍総理は当面玉虫色の見解を示しているが、来年中に大筋が決まる次期中期防衛力整備計画(2019年度から5年)ではこれが焦点となりそうだ。

 現実には米国、韓国の同意なしに日本が北朝鮮を攻撃し、朝鮮戦争を再開させる訳にはいかないから、米、韓軍が攻撃するなら手伝う形になろう。だが7月28日のICBM発射を予期できなかったことが示すように、米国、韓国にも標的の位置は確実には分からない。

 韓国軍は北朝鮮全域に達する地対地ミサイル「玄武2B」等を1700発も持ち、対地攻撃用の戦闘爆撃機が300機以上あるから、日本の戦闘攻撃機F2(総数92機)の一部が攻撃に加わったり、日本海上の潜水艦、護衛艦から巡航ミサイル、「トマホーク」数十発を発射したりしても、たいした助けにならず、むしろ米・韓軍の指揮・統制を混乱させる「お邪魔虫」かもしれない。

 もう一つの「さらなる行動」となりそうなのはイージス艦が搭載する迎撃ミサイル「SM3ブロックIA」(1発約16億円)を進歩型の「SM3ブロック2A」(価格は2倍以上)に換装する計画だ。

 現在のものは射程1000km、最大高度500kmで準中距離弾道ミサイル(「ノドン」級)にしか対抗できないが、日米共同開発の新型「ブロック2A」は第2、第3段ロケットも第1段と同様に太くし、射程2000km、最大高度1000kmに達する。これは本来グアムなどに届く中距離ミサイル「ムスダン」等に対抗するために開発され、弾道ミサイルの軌道の頂点付近での迎撃をめざす。少し工夫をすれば、北朝鮮から米本土に向けて発射されたICBMが上昇中に大気圏外に出たあたりで迎撃することも可能となりそうだ。

 もしそうなら日本海で待機する日本のイージス艦は、北朝鮮から米本土に向け北東方向に飛行するICBMを中国東北の吉林省、黒龍江省の上空で撃破できることになる。だが米国が韓国、日本を犠牲にしても“自国の安全が第一”との姿勢を示すなら、なぜ日本のイージス艦が米国に向かうICBMを撃墜してやるのか、との疑問が出そうだ。

(軍事ジャーナリスト 田岡俊次)