セーフティーネットの
役割も果たすデリヘル店

 そんな鬼頭氏が、風俗業界で働き始めたのは、ふとしたきっかけだった。「飲食店など、1人で回せるFC型の店を個人的に探していて、ネット上でたまたまオーナー募集のページを目にした」のが始まりだったという。

 本部に電話して話を聞くと、初期費用はさほどかからず、利益を出していくのも難しくないように感じた。そこでチェーンの元締をしている会長の元に面接へ赴き、FCオーナーとして採用が決定。約4年前、西東京の一角を任される形で風俗店の店長人生が始まった。

 ただ、土地柄、女性がなかなか集まらなかったこともあり、チェーンが未開拓だった上野へ進出。近くの浅草などにも拡大しながら徐々に店を軌道に乗せていった。

 軸足を都内に移してからは、女性の応募も増え、「3日に1度は採用に関する問い合わせがきていた」。ただ、激安店だから、女性の取り分は業界最低レベル。そのため、「普通の店では雇ってもらえないような容姿や年齢の女性が多かった」といい、時には50代の女性も応募してきたという。

 店としても働く女性を確保しなければ商売が始まらない。だから、鬼頭氏は「どんな女性でも、応募してきた女性はほぼ全員採用していた」と語る。だが、女性の方もしたたかで、複数の店に在籍するなど掛け持ちしていたため、30人程度の登録者の内、ほぼ毎日出勤できる女性は10人前後だった。

 年齢層が高めな上に、応募者の中には障害者手帳を持っている人すらいた。というのも、「家族」「地域」「社会保障」という三つの縁をなくし、生活に困窮する女性たちにとって、風俗店は生活を支える数少ないセーフティーネットにもなっていたからだ。だから、定住場所を持たない女性応募者も少なくなく、鬼頭氏が手続きを代行して家賃を店側が一部負担し、シェアハウスに住まわせることもあったそうだ。
 
 ただ、容姿やサービスが一定程度のレベルになければ、継続的に男性から指名されることはなく、収入が得られないのも現実。そうした事態は、雇う側の店にとっても死活問題だ。鬼頭氏の店では、ホームページに掲載する写真について「ボカしを入れた上で、本人とは無関係の写真を使うこともあった」という。基本的にデリヘルでは、顔出しNGの女性がほとんどなので、たとえ別人の写真を使ったところでバレはしないのである。

 ホームページなどに掲載される女性の写真は「パネル」といい、実物とパネルのギャップがひどいことは隠語で「パネマジ(パネルマジック)」と称される。「激安店ほどパネマジ遭遇率が高まりやすいのは事実」(鬼頭氏)。とはいえ、あまりに写真との差が大きくクレームの嵐では商売にならないので、なるべく文句を言われないように、太った嬢に痩せた女性の写ったパネルを使わない、といった微妙な工夫をこらしてしのいでいた。