こうした場合、罪に問われ罰せられるのは、客でもなければ女性でもない。鬼頭氏のようなオーナーや店長だ。考え方としては「未必の故意(明確に指示をしていなくても、そうなる可能性が分かっていて黙認していた)」に当たると判断され、たとえ女性と客が直に交渉してそうなったとしても、法律上(売春防止法)は、運営者が責任を問われることになるのだ。これは鬼頭氏にとって、予想だにしていなかった “落とし穴”であった。

 とはいえ鬼頭氏は、「実態として女性側が人気を得たいがためにデリヘルで本番行為をしている者も多いのに、指示していなくてもオーナーだけが責任を問われるのは、分かりづらい論理で納得いかない」と訴え、売春防止法を見直すべきだとして最高裁判所に上告の手続きを取っている。

 ちなみに、先述の五反田グループの面々は、今では池袋を拠点する別の店を運営している。そこでは摘発されたのと同じ手法、つまり「本番を指示して女性にやらせる」違法行為をいまだに続けているのだそうだ。

家路につくまで1年半
服役後に見据える未来像

 この日のガサ入れでは、同じチェーンの20人超が一斉摘発された。鬼頭氏はそのまま都内の留置所に連行され、通常なら20日間ほどで拘置所に移送されるところ、弁護人が裁判に向けて本来必要な面会などを面倒臭がった上、担当から外れたいと切り出されるといった紆余曲折もあり、4ヵ月以上たってようやく拘置所に移ることになった。

 当時、強引な取り調べに納得いかなかった鬼頭氏は、はじめに警察から事情を聞かれた客に証言してもらい、FCオーナーが一方的に罪を被らされる捜査の方向性を変えたいと画策。「この方法しか接点を持ちようがない」と思い、弁護人と相談した上で、取り調べを受けていた客に民事訴訟を起こすための訴状を送付した。

 だが、これが不利な証言をしないよう証人を脅したととられ、アドバイスしてくれたはずの担当の弁護士もろとも「証人威迫」の罪に問われてしまう。結局、そうした裁判も重なり、昨年の年央ごろに保釈。逮捕から1年半近くたって、ようやく家路につくことを許された。鬼頭氏は、「被告側の言い分を主張する場が非常に限られる中で、接点を持とうとしただけで証人を脅したと曲解されてしまったのは納得いかないし、いくら何でも勾留期間が長すぎる」と憤る。

 本来、鬼頭氏のように売春防止法で違反しても、執行猶予のつくケースがほとんど。しかし、前述のような件もあって、執行猶予のない実刑判決を受けることになった。鬼頭氏は来月から刑に服する。デリヘル運営で儲けた金は、数百万円を要した裁判費用でほとんどなくなってしまったという。

 そんな現況であっても、彼は未来を見据えている。

 将来的に、オランダやドイツなど売春が合法化されている国への進出を視野に入れているほか、業界内の実態を肌身で知る立場として“風俗ライター”への転身も目指す考えでいる。鬼頭氏は「風俗業はニッポンの立派な文化」として、性産業の可能性について発信していきたいと語る。