風俗嬢にもなれない「最貧困女子」から人生について考えてみた

作家であり、金融評論家、社会評論家と多彩な顔を持つ橘玲氏が自身の集大成ともいえる書籍『幸福の「資本」論』を発刊。よく語られるものの、実は非常にあいまいな概念だった「幸福な人生」について、“3つの資本”をキーとして定義づけ、「今の日本でいかに幸福に生きていくか?」を追求していく連載。今回は現代日本の貧困について考える。

リア充とプア充

 私が「人生のインフラ」を構成する3つの資本(金融資産・人的資本・金融資本)に思い至ったのは、現代日本の(とりわけ若い女性の)貧困を取材したノンフィクション作品を読んだときです。読者のなかには「貧困のことなど興味がない」というひともいるかもしれませんが、これは私たちがどのような社会に生きているかを知る興味深い事例なので、その話をしましょう。

 ジャーナリストの鈴木大介氏は、『最貧困女子』(幻冬舎新書)で“リア充”と“プア充”について述べています。

 リア充とは、一流企業に勤めていたり、友だちや恋人がいたりして、ネット上だけでなくリアル(現実)も充実している若者のことです。

 一方プア充は、貧困ラインを大きく下回る年収100万~150万円の地方の若者たちのことですが、鈴木氏は「彼らはプアではあるが“貧困”ではない」といいます。なぜなら、彼らの日々の生活は充実しているからです。

 鈴木氏が紹介するプア充は北関東に住む28歳の女性で、故障寸前の軽自動車でロードサイドの大型店を回り、新品同様の中古ブランド服を買い、モールやホムセン(ホームセンター)のフードコートで友だちとお茶し、100円ショップの惣菜で「ワンコイン(100円)飯」をつくります。肉が食べたくなれば公園でバーベキューセットを借りて、肉屋で働いている高校時代の友人にカルビ2キロを用意してもらい、イツメン(いつものメンバー)で一人頭1000円のBBQパーティをします。

 家賃は月額3万2000円のワンルーム(トイレはウォシュレットでキッチンはIH)、食費は月1万5000円程度だから、月収10万円程度のアルバイト生活でもなんとか暮らしていけます。負担が重いのはガソリン代ですが、休みの日はみんなでショッピングモールの駐車場に集まり、車1台に乗ってガソリン代割り勘で行きたいところを回るのだといいます。宮藤官九郎脚本のテレビドラマ「木更津キャッツアイ」で描かれた世界そのままで、彼ら彼女たちの生活は友だちの絆によって成立しています。

 誰もが同じような経済状況で貧富の格差がほとんどないから、「生活がキツい」と感じることはあっても自分が「貧しい」とは思いません。不幸や貧困は相対的なものですから、客観的な基準ではプアでも主観的には充実しているひとたちがいることは不思議でもなんでもないのです。