“善意の誤解”に要注意

 対人ストレスが起きるもうひとつの原因が、“善意の誤解”です。
 たとえば、AさんはBさんのことを考えて、よかれと思ってBさんにアドバイスをしたとします。
 Bさんは大勢の人と話すのが日常的で、まったく苦にもならない明瞭活発なタイプ。
 Aさんは人に話しかけるのも勇気がいる慎重なタイプです。
 AさんはBさんに勇気を振り絞ってアドバイスをしました。

 しかし、BさんはAさんの言い方が何か冷たいと感じ、しらけた態度を取ってしまいました。
 その反応を見て、今度はAさんがショックを受けます。そして、Aさんはこう思うのです。

「なぜ、私がここまでBさんのことを考えて、勇気を出したアドバイスをしたのに、Bさんは嫌な表情をしているんだろう? Bさんは私のことが嫌いなのかな?」

 どうでしょうか?

 明瞭活発なBさんは、Aさんの慎重な気性を理解してあげずに、自分の土俵で言葉を受けてしまい、Aさんのアドバイスを冷たいと、しらけた態度で返してしまったのです。
 Aさんは、よかれと思って勇気を奮ってBさんにアドバイスをしたのに……。

 こんな具合に、人間関係ではよくすれ違いが起こり、すれ違いの積み重ねがさらなる人間関係の悩みとなり、ストレスにまで発展してしまうのです。

 これを“善意の誤解”と呼びます。

 いわば、やさしさのすれ違いですね。だから感情がもつれて大変なのです。
 これがこじれてしまうと、「好き・嫌い」に発展します。
 こういったことが、頻繁に起こるからこそ、対人ストレスをなくすことは決して簡単ではないのです。