「棚同士のつながりを大切にしたい」
現在進行形で進化する棚。そこには、ストーリーがある。

――安齋さんにとって、「見やすい」棚構成というのはどういう状態ですか?

安齋 並べてみたときに、本同士、ジャンル同士、棚同士でつながりがあるという状態ですね。これの隣にはこれがくる、というのがハマるというか。

――ある意味「ストーリー」がある棚、と言えるでしょうか。

安齋 そうですね。たとえば時間管理の仕方の隣には手帳の使い方がくる、とか、もしくは時間管理のとなりに整理術の本がくる、とか。

――ちょっと話が逸れますが、自己啓発系というのは、並べるのが比較的難しいとよくお聞ききしますが、そうなのでしょうか。

安齋 そうですね。「仕事のスキル」寄りのものはそこまで難しくないんですけど、自己啓発はいまだに試行錯誤ですね。作家名のアイウエオ順で並べられがちですが、自己啓発の中でも「流れ」や「つながり」があるじゃないですか。ああいうものを軸にしてみるのもいいかもしれませんし、たとえば自己啓発といってもスピリチュアルがかったものから、もうちょっとばりばりの成功哲学ものまであるので、その軸で整理してみる手もあるかもしれません。

――お聞きしているだけでも、棚づくりの楽しさが伝わってきます。ちょっとうらやましいと思ってしまいました(笑)。

安齋 やりがいはありますよ(笑)。何と言っても、終わりがありませんから。

 新宿店に勤務していた際、一度増床したことがあったんですけど、このときのビジネス書の棚構成はすべて自分で考えました。割と評判もよかったです。けれど、今度はこの渋谷店で、新宿店とはまた違う、この店にあった棚を自分なりにつくっていっています。通常業務の合間にやるのでなかなか時間がとれないのが難点ですが……。

MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店<br />安齋千華子さん(後編)<br />「お客さまが自由に選べる書店でありたい」<br />ストーリーのある棚で、本との出会いを演出する安齋さんが「今のところうまくいっているほう」とおっしゃっていた政治、社会関係の棚、その遠景。こうしたお店に合った棚構成を日々研究しているという。