経営×ソーシャル
ソーシャルメディア進化論2017
2017年8月22日
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武田 隆 [クオン株式会社 代表取締役]

野中郁次郎氏が明かす名著秘話「『失敗の本質』はボツになりかけた」

【野中郁次郎氏×武田隆氏対談1】

『失敗の本質』といえば、初版刊行から30年以上の歳月が経った今もなお売れ続ける名著だ。世界中のビジネスリーダーにも広く読まれ、最近では小池百合子東京都知事が「座右の書」として同書を挙げたことでも話題になった。本連載では4回にわたり、その名著の共同執筆者の1人であり「知識創造理論の生みの親」でもある一橋大学の野中郁次郎名誉教授をゲストにお迎えする。対談冒頭、武田隆氏が自身の起業時を振り返り「『失敗の本質』は私にとってバイブルだった」と述懐すると、野中教授は同書出版にまつわる意外すぎるエピソードを披露してくれた。

ボツになりかけた名著『失敗の本質』

野中郁次郎(のなか・いくじろう)
1935年(昭和10年)、東京に生まれる。早稲田大学政治経済学部卒業。富士電機製造株式会社勤務ののち、カリフォルニア大学経営大学院(バークレー校)にてPh.D.取得。南山大学経営学部教授、防衛大学校社会科学教室教授、北陸先端科学技術大学院大学教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。著書に『組織と市場』(千倉書房、1974年。増補新装版、2014年)、『失敗の本質』(共著、ダイヤモンド社、1984年。中公文庫、1991年)、『知識創造の経営』(日本経済新聞社、1990年)、『アメリカ海兵隊』(中公新書、1995年)、『知識創造経営のプリンシプル』(共著、東洋経済新報社、2012年)、『戦略論の名著』(編著、中公新書、2013年)、『実践 ソーシャルイノベーション』(共著、千倉書房、2014年)、『全員経営』(共著、日本経済新聞社、2015年)、『知的機動力の本質』(中央公論社、2017年)、『日本の企業家 7 本田宗一郎 夢を追い続けた知的バーバリアン』(PHP経営叢書、2017年)などがある。

武田 私は『失敗の本質』を読んで以来、野中先生にお会いしたいとずっと思っていたので、今日はとても緊張しています。あの本は、1996年に手さぐりで学生ベンチャーを立ち上げた私にとって、市場の荒波の中で生き残るためのバイブルのようなものだったんです。

『失敗の本質』は日本軍の大東亜戦争(注:『失敗の本質』では、戦場が太平洋地域にのみ限定されていなかったという意味でこの呼称が用いられている)における敗因について研究された本ですが、その内容が驚くほど企業組織の問題にも当てはまりますね。

野中 そう言ってもらえるとうれしいですね。

 僕がアメリカの大学院から帰ってきて日本で研究をしようとしたときに、どうも企業は、成功事例は進んで語ってくれても、失敗事例を話すことにはあまり協力的ではなかったのです。

 どうしたものかと考えていたら、アメリカに留学する前に勤めていた富士電機(当時は富士電機製造)の上司が、「失敗というなら、日本軍を研究したらどうか」と助言してくれました。そこで、防衛大学校に赴任して複数人で研究を始め、『失敗の本質』を出版するに至ったんです。

 でも、最初は「タイトルが暗いから売れないんじゃないか」とボツになりかけまして(笑)。

武田 そうだったんですか! あの名著が……。



武田 隆(たけだ・たかし) [クオン株式会社 代表取締役]

日本大学芸術学部在学中の1996年、前身となるエイベック研究所を創業。クライアント企業各社との数年に及ぶ共同実験を経て、ソーシャルメディアをマーケティングに活用する「消費者コミュニティ」の理論と手法を開発し、複数の特許を取得。その理論の中核には「心あたたまる関係と経済効果の融合」がある。システムの完成に合わせ、2000年同研究所を株式会社化。その後、自らの足で2000社の企業を回る。これまでに森永乳業、ライオン、資生堂ジャパンをはじめ、300社超のマーケティングを支援。ソーシャルメディア構築市場トップシェア(矢野経済研究所調べ)。2015年、ベルリンと大阪に支局を開設。著書『ソーシャルメディア進化論』は松岡正剛の日本最大級の書評サイト「千夜千冊」にも取り上げられ、ロングセラーに。また、CSR活動の一環としてJFN(FM)系列ラジオ番組「企業の遺伝子」のパーソナリティも務める。1974年生まれ。海浜幕張出身。


ソーシャルメディア進化論2017

花王、ベネッセ、カゴメ、レナウン、ユーキャンはじめ約300社の支援実績を誇るソーシャルメディア・マーケティングの第一人者、クオンの代表取締役 武田隆氏が、ダイナミックに進化し続けるソーシャルメディアの現在と未来に独自の視点から迫る!

「ソーシャルメディア進化論2017」

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