ドジョウのように、泥臭く国民のために汗をかいてやり抜きたい――。日本の新しいリーダーに選出された野田佳彦氏は、代表選で自身の抱負をこう述べた。復興財源や原発問題など、重要な課題が山積するなかでの船出となったが、「こんな地味な首相が難局を乗り切れるのか」と心配する声もある。しかし意外にも、党内をまとめ切れなかった菅直人前首相の独善ぶりに辟易していた国民からは、「ノーサイド」を宣言して挙党一致を訴える野田首相の姿に、「隠れた期待」が寄せられているのも事実だ。小泉首相以降、短期間で目まぐるしく政権が変わってきた日本は、もはや海外からも呆れられている。野田首相の実直な「調整力」に、我々は日本の将来を託すことができるだろうか。野田内閣発足を前に、人々のホンネを独自調査した。(取材・文/プレスラボ・宮崎智之)

前原氏と海江田氏をまさかの撃沈!
「諦めムード」のなか船出する野田政権

「ドジョウは金魚のマネをしてもできない。泥臭く国民のために汗をかいて、政治をやり抜きたい」

 2011年8月29日、民主党代表選に出馬した野田佳彦氏は、投票前にこう演説した。この「ドジョウ」とは、詩人の相田みつをさんの詩集『おかげさん』(ダイヤモンド社)に収録された詩から、引用されたものだという。

 野田氏と海江田万里氏の決選投票にもつれ込んだ民主党代表選は、過去最多の5人が立候補して盛り上がりを見せ、最後まで結果がわからない混戦を繰り広げた。

 有力候補と目され、世論調査では支持率が断トツの1位だった前原誠司氏は、外相辞任の原因にもなった「外国人献金問題」などが響いて惨敗。党内最大の勢力を誇る小沢グループからも敬遠され、世論の後押しがあったにもかかわらず、3位に終わった。

 一方、その小沢グループから支援を受けた海江田氏も、1回目の投票で1位は堅持したものの、票が伸び悩み過半数割れ。結局、世論調査では振るわなかった野田氏が決選投票で勝利し、翌30日に首相指名された。