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市場の期待と景況の悪化に
追い詰められるFRB

週刊ダイヤモンド編集部
2011年9月2日
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8月26日の講演時のバーナンキ議長(右)。FRB内での意見の違いは大きく、容易にはまとまらないだろう
Photo:REUTERS/AFLO

 世界の市場関係者が固唾をのんで見守った講演は、肩透かしという結果に終わった。

 8月26日、バーナンキ・FRB(米連邦準備制度理事会)議長は、毎年恒例の「ジャクソンホール講演」を行った。昨年はこの講演で、大規模な国債買い取りという量的緩和第2弾(QE2)の実施が示唆され、以降の世界的な株高と資源価格高騰を招いた。

 今回も当然、投資家たちのあいだではQE3への期待が高まっていたが、フタを開けてみれば、具体的な策はなんら示されなかった。

 もっとも、市場はその内容を好感した。ニューヨーク・ダウはこの日、前日比で134ドル上昇。具体策こそなかったものの、9月20日に予定されていたFOMC(米連邦公開市場委員会)の会期を2日間に延長し、追加緩和策について議論を尽くす、との言及があったためだ。30日に公表された8月9日開催分FOMCの議事録によれば、この延長はじつは9日には決まっていたのだが、この講演で対外的に公表することで、市場に対しては、追加緩和への期待を持たせる強いメッセージとなった。

 専門家のあいだでも、「市場の緩和期待と、FRBの立場のバランスを取った、非常に巧妙なやり方」(雨宮愛知・米国野村證券エコノミスト)と評価する向きが多い。ここで市場の期待をつぶすと、株価が暴落し大混乱に陥りかねない。一方で、FRBの姿勢はいまだ固まっていない。つまるところは“時間稼ぎ”である。

 FRB内の一部には、金融緩和策に対する根強い反対論がある。そもそも金融政策では景気浮揚はできないうえ、インフレなどの副作用をもたらすとするものだ。他方で、前述の議事録では、より積極的な政策を求める“追加緩和促進派”も存在することが明らかになった。「勢力図が修正された」(小野亮・みずほ総合研究所主席研究員)印象だ。

 FRBは今後、景気の実態をにらみつつ、議論を煮詰めていくことになる。9月第1週にオバマ大統領が発表予定の景気・雇用対策も、検討の要素となる。その意味では、政治面も影響を与えよう。足元の経済指標では景気の減速ぶりが鮮明となっており、追加緩和への圧力は日に日に増している。

 具体策としては、超低金利政策のさらなる延長、短期債券と長期債券の入れ替えによる長期金利の低下などが検討されているが、いずれも決定打には欠ける。QE3はハードルが高いとの見方は依然多いものの、可能性はやや高まった。ただしこれは、インフレ加速という副作用の強い劇薬だ。

 市場に期待を持たせた以上、もはやなんらかの策を打ち出さないわけにはいかない。バーナンキ議長の苦悩は、今しばらく続く。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 河野拓郎)

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