[東京 14日 ロイター] - 2017年4─6月期国内総生産(GDP)は、予想を上回る「強い消費」が主役だ。自動車や白物家電など耐久消費財の好調な販売が消費を押し上げた。専門家の間では円高による物価安定効果が働いたとの声が広がってきた。ただ、為替反転時の物価上昇不安や、社会保障関連の負担増など心理的悪材料は解消されておらず、消費回復の継続性には疑問符が付いている。

<強い消費の背景に物価安定>

GDPの民間最終消費支出が、4─6月期になぜ強い伸びとなったのか──。

内閣府政策調査員の村上太志氏は、7月に公表したリポートで、16年央にかけて円高(名目実効レート)が進み、その影響が足元の消費者物価に波及し、ゼロ%付近で推移する一因になっていると指摘していた。

村上氏は、上がらない物価が「消費そのものに影響を及ぼした可能性が否定できない」と分析している。つまり物価が上がらないことで、個人の消費意欲に冷水をかける要因が減ったという見方だ。

今回のGDPで消費を押し上げた主な要因は、1)自動車や家電などの耐久消費財と食品等の非耐久財、2)旅行などのサービス消費──と内閣府は分析している。

こうした点と物価が上がらなかったことの複合要因で、個人消費が押し上げられたとの見方は、民間エコノミストからも出ている。

ニッセイ基礎研究所・経済調査室長の斉藤太郎氏は「耐久財が好調だったのは、買い替え需要があったことが大きいが、それをサポートする要因として、耐久財価格が4─6月期に下落していること、食料品の価格高騰が止まり、耐久財に支出を振り向ける余裕が出てきたことなどもある」とみている。

第一生命経済研究所・主席エコノミストの新家義貴氏も「物価がそれほど上がらなかったことが、消費の足を引っ張らずに済んだ。耐久消費財についても、新車効果や買い替え需要、天候要因が素直に消費増に表れたのは、物価要因が購買力の足かせにならなかったため」と分析している。

<物価上昇・実質所得減のシナリオ>

ただ、今年末にかけては、円高による物価抑制効果がはく落しそうだという。

バークレイズ証券の試算では、飲食料品・食料用農水産物の7月輸入物価は、3カ月連続で前年比プラス幅を拡大、CPIベースの17年度食料価格(生鮮食品除く)は前年比0.9%前後の伸び率で推移するとみられている。

ニッセイ基礎研の斉藤氏は、17年の賃上げ率が前年を若干下回り、名目賃金の伸び悩みが続く公算が大きいため「物価上昇ペースが加速した場合、実質所得の低下を通じて消費低迷のリスクが高まる」と予測している。

政府部内にも、物価上昇が消費を抑制させることに対し、警戒感を持つ声がある。

政府関係者のひとりは「経済に見合った物価上昇ならいいが、(そうでない物価上昇を加速させるような)円安にならないよう見極めが必要」だと話す。

別の政府関係者は「日本が必要以上に金融緩和を続け、リスクとして円安による輸入物価の上昇が強まり、国内経済に良くない影響を及ぼす可能性がある」と指摘する。

また、物価上昇の要因は、国内にもポツポツと出てきた。人手不足による人件費増大で運輸業界の値上げが続いているが、外食大手のすかいらーく<3197.T>が原材料価格上昇と人件費上昇を反映して、10月から値上げに踏み切ると発表。客単価は平均15円程上がる見通しだ。

<消費心理冷やす要因も>

他方、今の消費の強さに政府自身が疑問符を付けている構図もある。茂木敏充・経済再生相は、14日のGDP発表後の会見で「消費が完全に回復したかというと、力強さに欠けている面も残っている」と語った

内閣府幹部は、消費の構造問題に関し、1)長寿化の影響に伴う中高年の節約志向、2)高まらない若年層の将来収入に対する増加期待、3)低下する消費へのインセンティブ、4)消費にカウントされない中古品人気やシェアリング経済の広がり──などを挙げる。

特に長寿化の影響では、厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢を段階的に65歳まで引き上げる計画が、高齢者の消費性向を一段と引き下げる要因になっていると指摘する専門家の見方が多い。

「強い消費」がどこまで継続するのかによって、今後の日本経済の方向性が大きく変わりそうだ。

(中川泉 編集:田巻一彦)