[東京 14日 ロイター] - ドル/円<JPY=EBS>の下落にいったん歯止めがかかった。前週末の海外市場で一時108円後半に落ち込んだが、連休明けの東京市場では109円台後半まで浮上。日米景気が依然堅調なほか、米国の物価動向も底堅さを示し始めたとの見方が出ている。

ただ、北朝鮮を巡る地政学リスクはくすぶっており、円高再開の「火種」も残されている。

<米CPIの評価に変化>

市場の見方が前週末と変化したのは、米国の物価動向に対してだ。11日に発表された7月米消費者物価指数(CPI)は前月比プラス0.1%と、市場予想の同0.2%を下回った。米物価上昇圧力は弱く、年内の追加利上げは難しいと市場は受け止め、ドル/円は、一時16週間ぶりの安値をつけた。

しかし、週明けの市場では、7月米CPIの分析が進むにつれ、米物価動向には一定の底堅さが見え始めてきたとの見方が広がっている。

7月のCPIを圧迫した最大の要因は「家賃・帰属家賃以外の宿泊費(ホテル代等)」が前月比4.2%低下したことだ。統計が存在する1997年以降で最大の落ち込みとなったが「これを除けば、ほぼ市場予想に近い結果だった。一定の底堅さが読み取れる」(シティグループ証券・チーフエコノミスト、村嶋帰一氏)という。

野村証券・チーフ為替ストラテジスト、池田雄之輔氏も「コアCPIの前年同月比は3カ月連続で1.7%プラスと低調だったが、これは過去12カ月の平均速度の変化であり、トレンド転換を見逃しやすい」と指摘。より傾向を捉えやすい「前月比年率」でコアCPIの推移をみると、3月から7月にかけ、1.5%のマイナスが1.4%のプラスへと回復してきているとの見方を示す。

<北朝鮮リスク、相次ぐ警戒日>

北朝鮮情勢への警戒感も、ひとまず一服している。週明けには、ユーロ/円<EURJPY=EBS>や英ポンド/円<GBPJPY=EBS>、豪ドル/円<AUDJPY=EBS>などのクロス円が持ち直す動きとなった。「投機筋の円売りポジションのアンワイドは、先週までにある程度、一巡したとみられる」と、あおぞら銀行の市場商品部部長、諸我晃氏は見ている。

ただ、北朝鮮のイベントがこの先、8月15日の祖国解放記念日、8月25日の先軍節、9月9日の建国記念日と相次ぐ。

地政学リスクが再び高まるような事態になれば、1)キャリー・トレードの巻き戻し、2)株買いに伴う円売りヘッジの解消、3)日本勢による海外資金の還流(リパトリエーション)──など円高圧力への警戒感が強まる可能性がある。

北朝鮮と米国・韓国との間で軍事衝突が生じる事態に発展するようなら、一時的に流動性が枯渇し、ドルは100円に向かう可能性があると三菱UFJモルガン・スタンレー証券・チーフ為替ストラテジスト、植野大作氏は予想する。

ただ、米経済への影響が限定的と捉えられれば、流動性が回復するにつれ、ドル/円は元の水準に徐々に持ち直していくとみている。

一方、みずほ証券・チーフ為替ストラテジスト、山本雅文氏は、日本企業の資産が損害を受けたり、個人消費減退といった事態になれば円安圧力が働きやすいと指摘する。

ただ、日本が当事国となる場合、円買い・円売りの圧力のどちらが大きくなるかは、想定が非常に難しいという。

2011年3月11日の東日本大震災後には、生命保険会社が保険金支払いのために外貨資産を売却するとの思惑から円高が進行したが、実際には大規模なリパトリの動きは観測されなかった。

約1週間で約7円の円高に進んだ後、円ロングは急速に巻き戻された。有事の際には、市場の思惑と事態の推移が交錯するなかで、為替も複雑な動きを示すことになるかもしれない。

(平田紀之 編集:伊賀大記)