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吉田恒のデータが語る為替の法則

なぜ、超悲観相場は小休止しそうなのか?
「緊急FOMC」開催のサプライズも!?

吉田 恒
【第148回】 2011年9月7日
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 8月分の米国雇用統計はひどい結果でした。ただ、悲観的な結果をこれまでに十分すぎるほど相場に織り込んできたのに、金利低下、米ドル下落が一段と進み、弱気相場に陥るには限界があると思っています。

 今回は、そのような話を述べたいと思います。

悪い米雇用統計でも、米金利が下がりにくいと考えるワケ

 注目された9月2日(金)発表の8月分の米国雇用統計でしたが、非農業部門雇用者数(NFP)は、前月比6~7万人の増加といった事前予想に対し、前月から横ばいにとどまりました。市場予想を大きく下回る悪い結果でした。

 今回のNFPは、2010年9月以来の悪い結果でした。今からちょうど1年前ぐらいで、米国景気の「二番底」が取りざたされた頃になりますが、NFPは2010年6月から9月まで4ヵ月連続で前月比減少となっていたのです。

 さて、その当時の米国の長期金利(10年債利回り)がどれぐらいだったかと言えば、「資料1」のように2.5~3%を中心としたレンジで推移していたのです。

 それと比べると、今回発表の8月分のNFPは確かに市場予想よりかなり悪い結果ではあったものの、それでもまだ大幅マイナスになったわけではないのに、米国の長期金利はすでに2%前後まで下がっています。

 つまり、金利は米国雇用統計の悪い結果を十分すぎるほど織り込んでいたということになり、その意味では、さらに下がるというより、むしろ下がり過ぎの可能性すらあると思います。

資料1

 

 ちなみに、米国の長期金利が最近と同じように2%前後まで下がったのは、2008年暮れから2009年初めにかけてで、まさに「100年に一度の危機」の真っ最中でした(2009年1月6日のコラム「ドル/円は100円に戻るのだろうか?」参照)。

 当時のNFPがどうだったかと言えば、前月比30~70万人もの大幅な減少が続いていました。

 このように比較すると、NFPが横ばいという今回の結果と米国の長期金利が2%という状況はアンバランスだと思います。

 アンバランスであるということは、金利下がり過ぎの修正がいつ入ってもおかしくないということになります。そうでなくても、今回の米国雇用統計の結果を受けて、米国の金利が一段と下がるのは難しいと思うのです。

景気指標からすると、長期金利は3%を超えている計算に

 雇用統計以外にも、先週は米国で重要な景気指標の発表がありました。9月1日(木)に発表されたISM製造業景況指数がその1つですが、それとの比較でも、米国の金利は極端な下がり過ぎである可能性があります。

 今回のISM指数について、好況と不況の境目とされる50を割り込むとの予想が多かったのですが、結果的には50以上を維持しました。

 そのISM指数は米国の実質長期金利と相関性が高い関係にありますが、その関係からすると、米国の金利はかつてないほどの下がり過ぎになっている可能性があります。「資料2」をご覧ください。

資料2

 

 ISM指数の50以上が示唆する米国の実質金利は1.5%以上です。実質金利は名目金利からインフレ率を引いたものですから、逆に言えば、名目金利は実質金利とインフレ率を足したものになります。

 足元の米国のインフレ率は1.6%程度ですから、実質金利を足した名目長期金利は、なんと3%を超えている計算になります。

 景気指標の結果は確かに良くはないものの、それでも、米国の長期金利が3%程度で推移していておかしくないことを示すものになっているのです。それなのに、実際の米国の長期金利は9月2日(金)に終値ベースでも2%をついに割り込み、1%台へと突入しました。

 景気指標に比べて、金利は相当な下がり過ぎとなっています。だから、景気指標が悪かったからと言ってさらに下がるには限界があるだろうし、むしろ、下がり過ぎの修正で上がってもおかしくないと思うのです。

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吉田 恒 

立教大学文学部卒業後、自由経済社(現・T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。同社代表取締役社長、T&Cホールディングス取締役歴任。緻密なデータ分析に基づき、2007年8月のサブプライムショックによる急激な円高など、何度も大相場を的中させている。2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケット エディターズ」の日本代表に就任。


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