最終的なゴールは
事業戦略を成功させること

 欧米企業は、歴史的に知財部門の地位が高いため、このシステムが比較的スムーズに構築されている。一方日本の場合、知財部門の分析結果が提示されるのは研究開発部門までで、「自社のM&Aを報道で初めて知った」という知財部門があることも珍しくない。

 だが一部の先駆的な企業の中には、知財部門を活用する例も出始めている。このとき、知財部門の立ち位置として理想とされるのは、事業戦略とR&D戦略と知財戦略が連動する“三位一体”という構造だが、杉光教授はこの考え方は誤解を招くという。

 「知財戦略が対等な立場になると、管理行使など、独立した成果を求められがちです。知財部門は“稼ぐ”ための部門ではありません。知財はあくまでもマーケティングのツールとして考えるべきで、最終的なゴールは事業戦略を成功させることなのです」

 つまり、大切なのはマーケティングと知財が連動すること。具体的には、経営企画や事業戦略の部門が、知財部門と有機的に連携する。あるいは、知財部のトップが経営会議のメンバーとなって事業戦略に参画する、などだ。いずれにせよ、マーケティングリサーチの新しい手法として、グローバル規模で知財の活用はもはや必須となりつつある。