ピント外れな内容になっていることに気づけない

真の目的まで掘り下げる作業は、自分ひとりでできることもあれば、誰かに質問しないとわからない場合も多いでしょう。

社内報のエッセイの執筆を総務部の担当者から依頼されたら、その担当者に「これは何を目的として、どんなことを書けばいいんですか?」と聞きましょう。

人材広告のコピーを書いているなら、依頼主の企業が「本当はどんな人材を求めているのか?」を聞かなければいけません。出張レポートも、議事録も同じです。上司に依頼されたら、真の目的までしっかりと上司に聞いておく。

特に、ビジネス上で書く文章は、誰かに依頼されたり、必要に迫られて書くケースが多いものです。書く前に、素材を集める前に「真の目的」を確認することを習慣化しましょう。
 
真の目的が見えていれば、自然と、その目的に合致した素材をキャッチする「アンテナ」が立つようになります。書き始めてから素材を集め直したり、「こんな素材でいいんだっけ?」と迷うことがなくなるため、素早く集められるようになるのです。

たとえば、総務の人から社内報のエッセイを依頼されたとき、表面上の目的が「自己紹介」で、真の目的が「職場では見せないパーソナルな姿を社員に紹介する」であった場合を考えてみてください。

素材になりうるのは「会社の人が知らないマイブームの趣味」とか、「密かに開拓した会社周辺のおいしいランチの店」とか、「故郷の実家が四代続く老舗の理容室を営んでいる」といったようなことでしょう。

しかし、「自己紹介」という表面上の目的しか把握できていないと、「過去の仕事の実績」や「どんな思いで仕事に取り組んでいるか」などが、ピント外れの素材になってしまうと判断できないわけです。

もうおわかりかと思いますが、とりわけビジネス上の文章を書くにあたって、もっともやってはいけないことは、目的が定まらないまま文章を書くことです。問題文をよく読まずに回答した答案のように、そもそもピント外れの文章になってしまう可能性が高い。

そして、目的を決めずに書くと、「文章を書く」という行為そのものが目的になります。書くこと自体が目的化すると、「書き方」や「表現」にこだわり始めて、時間がかかります

先ほどの社内報のように、ピントのズレた素材で文章を書いて「書き直し」になれば、倍の時間がかかることにもなりかねず、生産性はガタ落ちします。

ビジネスにおける文章は、「表現の場」ではありません。
あくまで「コミュニケーションツール」です。
ツールそれ自体は、目的にはなりえません。

「うまい文章を書こう」という意識は捨てたほうがいい。
大事なのは、「真の目的」を達成することと、そのための素材です。
そして、素材に集中すれば、圧倒的に速く書けるのです。