[ワシントン/ブリッジウォーター(米ニュージャージー州) 19日 ロイター] - トランプ米大統領は腹心とされたバノン首席戦略官兼上級顧問を解任した。だがこれによって、投資家や米国の貿易相手を不安に陥れ、ホワイトハウス内のナショナリストと国際主義者の対立を招いた米国第一主義を、トランプ政権が放棄することはないとみられる。

バノン氏は古巣の極右系ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」への復帰を表明。ホワイトハウスの制約なしに物が言えるので、右派のための政治的な大義をさらに前進させる行動が可能になったと期待する声が賛同者から聞かれた。

トランプ政権が激しい論争を巻き起こした特定イスラム圏からの入国禁止命令や、パリ協定および環太平洋連携協定(TPP)からの離脱方針発表などは、バノン氏が推進した。こんな同氏に共和党主流派の味方は1人もいなかったが、トランプ氏を強く支持する保守系グループの一部からは非常に好感を持たれている。

バノン氏と親しいある人物は「トランプ氏は外部に強力な同盟者を得ることになる。バノン氏は大統領の政策課題を支持し、自ら巨大なハンマーを駆使して議会指導部をたたく」と述べた。

トランプ氏支持者の間でも、バノン氏が政権を去ったからといって、トランプ氏が昨年の選挙中に掲げた政策に背を向けるとは懸念されていない。67歳の中小企業経営者の男性は「トランプ氏はこれからも大丈夫だろう」と語った。

<消し去れない影響力>

ジョン・ケリー大統領首席補佐官としては、バノン氏が去ったホワイトハウスに一定の秩序を確立することができた。とはいえ、バノン氏は今後もブライトバートやツイッター、テレビなどを通じてトランプ氏に直接意見を伝える手段を有する、とあるホワイトハウス高官は述べた。

スタンフォード大学フーバー研究所のコリ・シェイク研究員は「特にトランプ氏がもし、ケリー首席補佐官が取り仕切るはっきりした権限の色分けや、マクマスター(安全保障担当補佐官)の秩序立った仕事の進め方によって動きを封じ込められたと感じる場合、(バノン氏は)恐らく外部からより効果的な方法で大統領を突き上げるだろう」と予想した。

さらにシェイク氏は「バノン氏は問題の原因ではなく兆候だったように見える。つまりトランプ氏はバノン氏のダークビジョンを共有し、バノン氏が代表するような人々に支持されるのを喜んでいるとみられる」と付け加えた。

バノン氏は18日、保守系週刊誌ウィークリー・スタンダードに対して、これからはブライトバートを使って、自ら掲げてきた大衆主義的・ナショナリスト的な政策に反対する共和党主流派などを容赦なく攻撃する考えを明らかにした。

具体的にバノン氏が外部から影響力を及ぼせる政策の1つとしては、国防問題が挙げられる。

トランプ政権の安全保障チームの大勢はアフガニスタンへの米軍増派だが、バノン氏は現在駐留する8400人の兵力を全面的に引き揚げるべきだと主張してきた。また北朝鮮に関しては軍事力行使を否定している。

別のトランプ政権高官は「バノン氏がブライトバートの読者層にアピールする以外何の意味もないような情報発信を続けるなら、極右派と伝統的な保守主義者、ヒラリー・クリントン氏が嫌いな中道派が緩やかにつながっているトランプ政権の支持層がどんどん分断化されていく恐れがある」と警戒感を募らせている。

(John Walcott、Steve Holland記者)