旅行のような楽しいイベントは、大切な仕事が終わってから。仕事が残っていては、心から楽しめない。多くの人がそう考えがちである。だが実際には、仕事が終わっていなくても十分に楽しめることが、筆者らの研究から明らかになった。


 これまでに何度、旅行に行くとか、自分へのご褒美といったお楽しみを先延ばしにしたことがあるだろうか。いつだってやるべき仕事が山ほどある気がして、それを先に片付けなければいけなかったはずだ。

 私の研究室では、仕事と遊びの順番をどうしているか、さまざまな職業の人にアンケート調査を行なった。すると、何度も同じ答えを耳にした。仕事が済んでもいないのに遊ぶなんてとんでもない。仕事が先、遊びは後だ、と。

 これはもう、ほとんど直感のようだ。誰だって、To Doリストを気にしたり、先にお祝いをすることに罪悪感を抱いたりすることで、せっかくの楽しみを台無しにしたくはない。そのため、たとえば休暇旅行は、重要なプロジェクトの納期の前ではなく、後に予定しておく。ご褒美は仕事をきっちり済ませた後まで取っておく。そうすれば、心から楽しめると思うからだ。

 だがはたして、この直感は正しいのだろうか。そこで、「遊びを先」にすると実際にどんな気分がするものなのか、いくつかの実験で調べてみることにした。すると、その順番は実はそれほど大事ではないことが判明した。この調査は学会誌『サイコロジカル・サイエンス』に掲載されている。