第2部
テクノロジーの最適な活用で
若者の心をつかむ効率的な企業経営を

日本の人口が今後長期にわたって減少し続ける中で、若くて優秀な人材の獲得は全ての企業にとって重要な経営課題となっている。一方、終身雇用制度が崩れ、また環境についていけない大企業はその規模を保つのに苦心し、安定性も揺らぎつつあるにもかかわらず、日本の学生の大企業志向は依然根強く、中小企業が優秀な若手社員を確保することは難しい。会社の存亡がかかったこの難題に、中小企業の経営者はどう立ち向かえばいいのだろうか。

偏差値教育と少子化社会が
若者を大企業に向かわせる

 少子高齢化による若年層の減少と、景気の回復基調が相まって、現在の採用環境は売り手市場に転じている。しかも、多くの学生は大企業への就職を熱望し、中小企業が若い優秀な人材を獲得することは容易ではない。

日本HP
パーソナルシステムズ事業本部
パーソナルシステムズ・マーケティング部
部長
甲斐博一氏

 一方、先進諸国では、優秀な学生ほど自らベンチャーを立ち上げたり、今後の成長を期待できるスタートアップ企業を志望する。なぜ、日本の若者は大企業を指向するのか。日本HPの甲斐博一氏は「偏差値教育の影響と、“エンジェル係数(家計支出の中に占める子育て費用の割合)”の上昇に象徴される家族環境にも大きな要因があるのではないでしょうか」と考察する。

 学生時代を通じて偏差値による評価を基準とされてきた若者たちは、企業をランク付けし、ランキングの高い企業に入りたいと考える。それが偏差値教育の影響だ。しかし、それだけではない。出生率が低いために、少ない子どもに対して親や祖父母の期待は一身に集まる。期待に応えなければならないというプレッシャーから、就職先として誰もが知っている大企業を志望するようになる。

 少子化が続く中では、こうした社会的な傾向が変わることは短期間では考えにくい。今後も中小企業にとって厳しい状況は続くだろう。中小企業の人材獲得は、喫緊の大きな経営課題であり、早急に手を打つことが求められているのである。