過去の成功体験にこだわらず
若者の考え方に一度寄り添ってみる

 若者を受け入れる中小企業側にも問題はある。甲斐氏は「現在、多くの企業のミドルマネジメント層は、“人口ボーナス期”に成功した世代であるということを認識していない」と指摘する。

 過去の成功体験は人口増加によるところが大きい。本人の努力とは関係がなく、特に効率を追求しなくても、業績は右肩上がりで伸びた。いわば人口増加がもたらした恩恵である。それを認識した上で虚心坦懐になって若者の言動を見ると、納得できる部分は多い。

 例えば、若者たちは電話をかける前に「今から電話してもいいか」とLINEで確認する。そんな回りくどいことをしないで電話をかけろと考えがちだ。しかし、立ち止まってよく考えてみると、いきなり電話をかけて忙しい相手の時間を奪わないように配慮しているということがわかるはずだ。若者たちは相手に嫌われることが最も嫌なのだから。

「私たちが若いころのビジネスは、相手の時間を勝手に奪うことで数字を作ってきましたが、実は社会全体の生産性を下げていたとも考えられます」(甲斐氏)。しかし、時代は変わり、こうした一方通行の理屈は通らない。

 マネジメントがそこに気が付けば、若者の言動も「あぁ、そうか」と理解でき、彼らにとって快適な環境作りをしようという発想に転換できるはずだ。「今一番重要なのは、こうした変化に興味を持ち、受け入れていく姿勢だと思います」と甲斐氏は語る。

 実際、LINEでやり取りするように、スタンプで感情を表現するのは効率的なコミュニケーションだ。それをふざけていると片付けてしまってよいものかどうか。特に、大企業のような大掛かりな働き方改革が難しい中小企業では、経営者のこうした柔軟性こそ求められているのである。

 もう一つ若者たちから学び取れるとすると、“協働”に臨む姿勢だろう。今の若者たちは学生時代にヒエラルキーのない協働作業を経験してきていることが多い。しかし、おおよそ団塊ジュニアから上の世代は、ヒエラルキーの中で育っていて、協働に不慣れだ。

「企業がまだ協働の文化になっていないことに、若い世代は落胆しているかもしれません」と甲斐氏は懸念する。人数的には上の世代が圧倒的に多い。その人たちが立場を超えた協働に不慣れだと、若者たちの経験も生かせない。コラボレーションやエコシステム、ダイバーシティが必要とされ、従来とは異なる力をどう生かすかが企業の生き残りを左右する時代にあって、これは大きな損失ではないだろうか。

 若い世代がどうやってオジサンたちとうまくやっていけるようにするか、どうすれば成果を出せる環境を作れるか、経営者は変化への柔軟性とダイバーシティの精神を身につけ、方向転換をする必要がある。