中国に「世界最大の自動車市場」の称号を譲ったとはいえ、日本の約4倍の新車販売台数を誇る米国市場はいまだ世界の自動車メーカーの収益を大きく左右する存在だ。その重要マーケットで、日本の代表選手たるトヨタ自動車とホンダの苦戦が続いている。8月の米国新車販売台数は、トヨタが前年同月比12.7%減、ホンダが同24.3%減とそろって4ヵ月連続のマイナスとなった。両社とも秋以降、巻き返しを図る構えだが、果たしてうまく行くのか。現地からレポートする。(文/ジャーナリスト ポール・A・アイゼンスタイン、翻訳/沢崎冬日)

 米国において、トヨタ自動車の中型セダン「カムリ」ほど、ひとつのブランドを明確に定義づけるような車種はめったにない。「カムリ」は過去14年間のうち13回、米国の乗用車部門の販売台数首位を守ってきた。

 2010年の安全性問題でのリコール、そして今年の震災による生産減少も含め、立て続けの逆境から回復しようと苦闘するトヨタにとって、これほど重要な製品も他にないと言えるかもしれない。

 新車種の市場投入は、時間のかかる複雑なプロセスである。

 トヨタが「カムリの再発明」と称する新「カムリ」を10月発売に向けて米国のショールームに登場させる準備が整ったことは、同社にとって幸先のよい話である。ちょうどトヨタは、最新工場での生産体制を期待通りのペースに乗せたところである。

 「この新『カムリ』の発売は我が社にとって非常に重要だ」。ケンタッキー州ジョージタウン、2012年型新「カムリ」の製造を開始したばかりの組立て工場の中枢部分に歩を進めながら、豊田章男社長は言う。「『カムリ』はトヨタの成功の象徴であり、再び世界に向けてトヨタ本来の姿を示す機会でもある」

 創業者の孫で、社長としてトヨタ自動車を率いる豊田章男がケンタッキーに足を運んだことで、新「カムリ」が担う重要な役割はいっそう強調された。「カムリ」は、米国の乗用車市場で9年連続の販売台数首位となっている(過去14年で13回)。だが3月に日本を襲った地震と津波の結果、生産台数は減少し、「カムリ」が2011年も首位を維持できる可能性は低下している。

 もっとも、震災の影響は、単に状況をより複雑にしただけだ。トヨタは依然として品質・安全面での汚名をそそぐのに苦労している。2010年中は毎週のようにトヨタを露骨に批判する見出しが新聞の紙面を踊った。こちらのメディアは最近、(トヨタの工場が通常の生産を再開しつつあるなかで)これらの問題は修正されていると報じているが、それでも新「カムリ」に対する当初の評価は、控えめに見ても、賛否両論になる可能性がある。

 さて、思いもかけぬ厳しい課題に直面している日本の大手自動車メーカーは、トヨタだけではない。