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金融市場異論百出

スイス中銀のまねは困難
介入失敗のツケは納税者に

加藤 出 [東短リサーチ取締役]
2011年9月14日
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 スウォッチは、スイスフラン高で悲鳴を上げている代表的な企業の一つである。廉価な時計を販売している同社は、高級ブランドの時計メーカーと異なって、為替レートの影響をもろに受けやすい。同社はスイス国立銀行(中央銀行)に対して対策を取るよう要求してきた。

 同行は9月6日にユーロの対スイスフランの下限レート(1.20フラン)を設定。徹底介入により通貨高を阻止するという。これまで当座預金残高を大幅に増加させる金融緩和策を数回実施したが、まったく効果がなかった。

 日本政府がスイスの今回の決定をまねできるかというと難しい面がある。スイスのGDPは日本の10分の1程度にすぎない。G7のメンバーでもない。小国ゆえにスイスの介入は許されている。

 市場介入がもたらしうる納税者負担の問題も議論を整理しておく必要がある。スイス国立銀行は2009年3月から昨年6月にかけて、輸出産業を守るため介入を行った。それは昨年度から今年度前半に298億フランという巨額損失を招いた。スイス国民党は激しく怒り、中央銀行総裁に辞任を求める騒ぎに発展した。今回の「下限レート設定」に至る過程で、同行は、今後の介入で損失が発生しても責任が問われないような政治的コンセンサスの醸成を待っていたのだと考えられる。

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加藤 出 [東短リサーチ取締役]

東短リサーチ取締役チーフエコノミスト。1988年4月東京短資(株)入社。金融先物、CD、CP、コールなど短期市場のブローカーとエコノミストを 2001年まで兼務。2002年2月より現職。 2002年に米国ニューヨークの大和総研アメリカ、ライトソンICAP(Fedウォッチ・シンクタンク)にて客員研究員。マネーマーケットの現場の視点から各国の金融政策を分析している。2007~2008年度、東京理科大学経営学部非常勤講師。2009年度中央大学商学部兼任講師。著書に「日銀は死んだのか?」(日本経済新聞社、2001年)、「新東京マネーマーケット」(有斐閣、共著、2002年)、「メジャーリーグとだだちゃ豆で読み解く金融市場」(ダイヤモンド社、2004年)、「バーナンキのFRB」(ダイヤモンド社、共著、2006年)。


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