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吉田恒のデータが語る為替の法則

米国の軌道修正で悲観論後退でドル高に。悲観論継続でも「有事のドル高」で反発へ

吉田 恒
【第149回】 2011年9月14日
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 先週、世界の金融市場では先行き不安が一段と拡大し、混乱が広がりました。そういった中で、週末にはG7(先進7ヵ国財務相・中央銀行総裁会議)が開かれました。

 今回のG7の結果に対しての一般的な評価はかなり厳しいようで、「具体的成果はなかった」といった評価が多かったようです。

 ただ、G7が現在できることは限られており、その中では、ベストに近いことをやったと私は思っています。

 したがって、最近の悲観相場は修正に向かうと思っています。そうであれば米国の金利が上昇して米ドル高となるし、修正局面への移行に時間がかかって悲観相場がまだ続くとしても、決済通貨のドル資金を調達する動きによって米ドル高が進むのではないかと見ています。

「G7は成果なし」との見方は正しいのか?

 まずは「資料1」をご覧ください。これは、今回のG7の合意を要約したものですが、この4つの段落の3つ目までが財政政策について述べています。金融政策については、4つ目の段落で言及しているだけなのです。

資料1

 しかも、この財政政策についての言及は、財政赤字削減、債務削減より、中長期的なそういった財政再建の中で、いかに短期的に財政刺激策をやることが必要かということを強調しているように読めます。

 米国のオバマ大統領が、このG7の前日に発表した雇用対策で言及しているのは、まさにそういった観点です。

 金融市場では、とくに先進国の場合、巨額の財政赤字を抱えているために財政政策の景気刺激には限界があり、あとはせいぜい金融政策が何をやるかということだけが関心のように言われています。

 ところが、それと今回のG7の合意は、かなりギャップがあります。

 それでは、G7は、金融市場からの期待がわからないのか、それとも、わざと知らないふりをしたのでしょうか?

米国が短期的な財政政策出動に転換したなら…

 たとえば、米国の長期金利(10年もの国債の金利)の推移を見ると、金融市場の先行き不安は、ジワジワと進んだものではなくて「ある日突然」急に広がったものだとわかります。

 「資料2」は米国の長期金利の推移ですが、8月上旬に3%から2%へと急低下しました。これは、米国がデフォルト(債務不履行)回避のために、短期的な財政政策さえも否定したことが主因だと思います。

資料2

 そんなふうに考えると、金融市場の悲観論は、先進国の政策的な限界を懸念してジワジワと広がってきたものではなく、「ある日突然」急浮上したもので、客観的に見ると、そのきっかけは米国が緊縮財政に過度に傾斜しかねないとマーケットに受け止められたためではないでしょうか?

 そうだとすると、オバマ大統領の雇用対策や、今回のG7でその軌道修正に動いたことに、意味がないとは思いません。

 もちろん、オバマ大統領の雇用対策については、抵抗の強い米国議会で可決され、実現するのか、懐疑的な見方はあるでしょう。

 ただ、8月から急拡大するところとなった世界経済の超悲観論のきっかけが米国の財政政策への不安だとするならば、その軌道修正が始められたということは、悲観論の修正が始まっていく可能性を感じます。

「有事のドル高」で米ドル買い・円売りに

 このように、行き過ぎた悲観相場の修正で、米国の金利が上昇し、そして米ドルも上昇するという展開をメインシナリオとして、私は考えています。

 実際のところ、悲観相場が広がり、米国の金利が低下する中でも、米ドルは先週まで上昇してきました。

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吉田 恒 

立教大学文学部卒業後、自由経済社(現・T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。同社代表取締役社長、T&Cホールディングス取締役歴任。緻密なデータ分析に基づき、2007年8月のサブプライムショックによる急激な円高など、何度も大相場を的中させている。2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケット エディターズ」の日本代表に就任。


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