白を基調としたモダンな店内に、蕎麦好きはもちろん
イタリアンやフレンチ好きの客も多く集まる

 洒落たイタリアンや気軽なカフェレストランに行き慣れた客も来るから、「蕎麦屋はどうも……」という人たちがいたら「案山子」に招いてみるのがよいかもしれない。きっと2度、3度と癖になるだろう。

 店内は白の配色を強調したモダンな設計で、シンプルなデザインの中にもどこかやさしいトーンがある。さながら白いキャンバスに自分の夢を描いたような蕎麦屋になっている。

芝「案山子」――本格の和懐石と二八蕎麦に命を与える“ひとしずくの水”へのこだわりが客に感動を呼ぶ白いキャンバスに夢を描いたような蕎麦屋を造った。イタリアンやフレンチ好きの客が多く訪れる。ワイン好きの客もここで日本酒の美味しさを発見することになる。

 カウンターは亭主が配膳し、酒をセレクトしてくれる。一人客は手が空けば亭主が相手をしてくれるから飽きない。

 ペアの客もこのカウンター席がお目当てで通ってくる。テーブル席は予約がよく入るという。落ち着いた客層で、わっと騒ぎ立てる風なところがない。

「案山子」までは芝公園駅が近いが、大門駅あたりから増上寺の山門をくぐり、日の翳った境内を散歩してみるのもいい。

 見上げると東京タワーの美しいライトアップに遭遇できる。秋には読経がこだまのように響いて心が穏やかになる。そこから「案山子」までは歩いて10分程度。待ち合わせには適当な場所になる。

 山田さんは30歳に手が届く頃まで事務系の勤め人だった。意に染まぬ仕事を淡々とこなしていたが、実弟が京都の割烹修業から帰り、店舗を持つことになって突然、一大決心をした。

 「弟に触発されました。きっと僕の中に眠っていたものが目を覚ましたんでしょうね」(山田さん)。