デノンは8月29日、設置がしやすい小型の筐体にHi-Fiオーディオで培った様々な技術を投入した新プリメインアンプ2機種を発表した。デザインシリーズとして2014年に発表した「PMA-50」の後継製品。フルサイズ機に匹敵するオーディオ性能と、現代的なインテリアにマッチするデザインの両立を自負する。

PMA-60/30
PMA-60
PMA-60/30

 USB入力可能な「PMA-60」(50W+50W、4Ω)は、クアルコムのDDFA(Direct Digital Feedback Amplifier)を採用し、価格と発売時期は7万5600円/10月下旬。

PMA-60/30
PMA-30
PMA-60/30

 DDFAではないが、デジタル入力可能なD級アンプを左右それぞれ2つずつブリッジ接続(BTL:Balanced Transformer Less)で使用した「PMA-30」(40W+40W、4Ω)は5万4000円/9月下旬。

 ともに光2系統/同軸1系統のデジタル入力端子、RCA1系統のアナログ入力端子を持つ。

 PMA-60に限った特徴としては、ビット拡張技術の「Advanced AL32 Processing Plus」の搭載、USB接続時により広範なフォーマットに対応できる点(最大11.2MHzのDSDおよび最大384kHz/32bitのPCM)、デジタルアイソレーターの搭載、44.1kHz系と48kHz系の2種類のクロックの搭載、NFCペアリング機能の搭載、アルミフットやボリュームノブの部材の相違などがある。

PMA-60/30
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ボリュームのつまみのデザインは、左のPMA-60は縁がダイヤモンドカットされ、サイドがヘアライン仕上げになっている。右はPMA-30。
PMA-60/30
1チップ化されたDDFAを搭載
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周辺回路がシンプルになり設計しやすい
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PMA-60はデジタルアイソレーターにより外来ノイズを排除
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マスタークロックデザインを採用
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PMA-30はDDFAではないが、こちらも片チャンにD級アンプを2つ使用する高音質設計

1チップ化した新世代DDFAは音質面でもメリットあり

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冒頭であいさつするマーケティング担当の上田氏

 PMA-60が搭載する、DDFAモジュールは最新世代の「CSRA6620」となる。DDFAはDirect Digital Feedback Amplifierという言葉が示すように、アナログ信号に変換せずデジタル信号のまま入力できるD級アンプであり、かつクローズループで(出力した信号をフィードバックして、入力する信号自体を補正することで)特性を改善できるのが特徴だ。

 前世代のDDFAは、信号の増幅に使う「PWMモジュレーター」と、出力段の信号と理想的な信号の間の差分を取り、A/D変換してPWMモジュレーターに戻す「アナログフィードバック」(CSRA6600+CSRA6601)を別々のチップで構成していたが、CSRA6620ではこれを1チップ化した。

 デジタル信号とアナログ信号を扱う回路を混載するのは難しいとのことだが、信号経路がシンプルとなるため、音質面でも有利になるそうだ。同時にデノンのようなセットメーカーは、基板設計に関わる開発工数を減らせ、パーツの吟味など別の部分にリソースを集中できる。以上が1チップ化によるメリットだ。

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一般的なD級アンプ、PMA-30、PMA-60の違い。フルデジタル入力でPMA-60はフィードバックで特性も改善

駆動力の高さを感じる

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デノンのサウンドマネージャー山内慎一氏

 サウンドマネージャーのの山内慎一氏は、「PMA-50は初のDDFA搭載モデルであり、開発陣にとっても思い入れが深い製品だった」と話す。市場でも好評を博したが、「PMA-60はその後継機種だから、より一層力を入れた製品になっている」とする。加えて「PMA-50もできが良かったが、さらなる可能性や改善の余地はあると認識しており、それをPMA-60に反映させたいと考えた」と説明した。

 PMA-50のあとに「DRA-100」や「DA-310」といったDDFA搭載機の開発が続いたこともあり、そこでもノウハウを蓄積している。さらにHi-Fiの2500シリーズ、1600シリーズの流れも取り入れ、コンデンサーや抵抗に同等のカスタム品を使っているそうだ(シャーシの制約があるため、部品は小型化している)。

 山内氏によると、「仕上がった音は、PMA-50よりも分解能が出て、細かい音も聞こえ、よりクリアーになった」とのこと。繊細さや切れの良さを十分に実現できたことに加え、「空間表現なども洗練されている」と自信を示した。

 ライブハウスで開催した説明会では、B&Wの804 D3を使ったデモが実施された。再生楽曲は、ボーカル主体でもビートがハッキリと出るものや、電子楽器を使った音楽が中心となった。特にPMA-60では、低域の再現性が十分にあり、ずしんと音が前に出てくる駆動力の高さを見せた。表現はスピーカーの傾向もあり、付き刺さるぐらいにシャープだった。同じ曲で比べることはできなかったが、弟機のPMA-30もブリッジ接続したD級アンプを使用することもあって駆動力が高く、ポテンシャルの高さを垣間見せた。

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マーケティング担当の志田氏

 デノンでPMA-60/30のマーケティングを担当する志田氏は、再生環境の変化について指摘。PCでダウンロードしたハイレゾ音源の再生、Spotifyに代表されるインターネット経由の定額ストリーミング配信サービスなどが主流となってくる中、「Hi-Fiオーディオも柔軟なスタイルに応えるように変わってきている」とした。デザインシリーズは、コンパクトでどこにでも置きやすい製品を従来のスピーカーにつないでいくコンセプトで開発しているが、こうした流れに応えるものだ。

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ヘッドフォンアンプは、独自に開発

DDFAの競合優位性を改めて強調

 DDFAに関してはクアルコムのDamien Vandenbeyvanghe氏が説明した。

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Damien Vandenbeyvanghe氏

 開発に際しては10年の歴史を持ち、特許を取得した独自のフィードバック方式により、D級ならではの電源効率の高さとアナログアンプに匹敵する特性(歪みや残留ノイズの少なさ)が得られる点を強調する。

 典型的なD級アンプでは、デジタル入力時、ソースを一度アナログ信号に変えたのち、PWM増幅する方法を取るが、ここがDACの性能に依存する劣化やノイズなどの原因になる。一方、出力段より後ろでも、ローパスフィルターの非線形性に依存する歪みや電源に起因するノイズの影響を受けやすい。

 最近ではDACを挟まず直接デジタル入力する、フルデジタルアンプも存在する。ただし、出力段から出た信号をデジタル領域にフィードバックする際、振幅をそのままADC(デジタル→アナログ変換)に入れてしまうと、出力する信号が大きすぎてサチレーションしてしまう危険性がある。

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DDFAのブロックダイヤグラムと利点に関する要約
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従来世代からの改良点

 DDFAでは、歪みやクリッピングを起こさないよう、出力段からフィードバックする際に、(リファレンスDACで出力した理想的な)出力信号との差分を取り、誤差のみをADCに返す点がユニークだ。また、ローパスフィルターから出力した信号をフィードバックするモジュールや、電源を常時モニターし、一定の電圧をキープできず、揺れが生じた場合に補間できるモジュールも必要に応じて利用できるようになっている。

 結果、競合との特性比較で、可聴域全体(20Hz~20kHz)で安定的に歪みを低く抑え、高いS/N比(ノイズの少なさ)を実現できた。最大音量まで上げても歪みがなく、残留ノイズも少ないので、入力がない状態で音量をあげてもヒスノイズやバジングが生じないという。スペック表に記載される1kHzの歪みだけでなく、全帯域での歪みが低い点も強調していた。

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競合と比べて歪みが低く、しかも全帯域で維持している点をアピール
PMA-60/30
残留ノイズ(青)が低く、S/N比(緑)が良好

 結果、電源効率とオーディオクオリティの両立ができるチップであるというのがクアルコムの主張だ。なお、2013年に発表した従来版は、チップセット構成で設計に手間がかかることもあり、ハイエンド機器向けの製品としていた。しかし新世代版では、1チップ化するとともにパッケージサイズも9mm×9mmに小型化し、モバイル向けなど幅広い機器にも搭載できるとしている。

aptX LL対応のBluetoothなどにも注目

 PMA-60/30の本体サイズと重量は共通で、幅200×奥行き258×86mm(横置き時)、2.7kg。縦置きも可能で、その際には有機ELパネルの表示向きやフットの交換が可能だ。ともにBluetooth接続が可能で、伝送コーデックはaptX Low Latencyに対応する。

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入出力端子の違い
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仕様比較

 なお、ヘッドフォンアンプは両機種ともスピーカー駆動用のアンプとは別に開発している。

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PMA-30(右)
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側面に縦置き時に使用するフット取り付け部がある
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背面。PMA-60は電源ケーブルの取り外しができる
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フット部分、PMA-60はアルミ製
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NFCは側面
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リモコン