古から今も変わらず慣習、習慣を受け継ぎながら、流々とした時を刻む町京都祇園。時代を超えて私たち日本人の心を惹きつける「粋の文化」を祇園に入り浸る著者が「かっこいいおとな」になるために紡ぐエッセイ。第9回は、祇園でのあいさつについてお届けいたします。(作家 徳力龍之介)

撮影/福森クニヒロ

丁寧でかつ徹底された祇園での「あいさつ」

 礼儀というのか当たり前の話だが、知り合いや、商売をしていれば贔屓や出入りに出くわせば挨拶を交わす。祇園町に身を置くと挨拶がいかに大切かを知らされその徹底ぶりに感心するのである。

 舞妓さんの卵である仕込みさん、見習いさん、そして舞妓さんになっても先にお座敷に上がった順に上下関係が決まっている。年齢ではなくデビューの早い人がお姉さんになる。そして芸妓さんになっても定年が無いので80代90代になるお姉さんが存在するが、このヒエラルキー的な順位は変えようがない。

 そして下から目上に対しての挨拶が徹底しているのである。まず驚くのは街中で出会ったときだ。必ず立ち止まって一礼をして必ず声を出して挨拶をする。今時の人では見られない光景だ。これは芸舞妓衆だけの事ではなく、コミュニティーに属する人には皆同様に挨拶をしてくれる。

 お座敷内での様子も徹底していて、お座敷に入ってくるとお客に挨拶は当然だが、自分より目上の芸舞妓衆がいるとその横にまず座り、挨拶を交わしてから言われた場所に移動する。後から目上の芸舞妓衆が入ってくると「姉さん、おいでやす」という具合だ。