デジタルトランスフォーメーションへの対応とは、たんなる技術革新の追求であると考えている日本企業が多いようだ。しかし「むしろ大切なのは、変わろうとする意識の形成や、変化に対応できる組織のあり方に変えていくこと」だと澤谷教授は指摘する。

 柔軟に変化できる企業風土は、2012年に創業したマネーフォワードのように新しい会社だからこそ実現可能なのだろうと思いがちだが、澤谷教授は「古くからある大手企業の中にも、変化を追求し続けて伸びている企業はあります」と語る。代表例のひとつとして澤谷教授が挙げるのが、警備サービス国内最大手のセコムだ。

「一般に企業が新規事業を立ち上げる際には、売り上げ目標などを定めた事業計画の承認が必要ですが、セコムの場合、儲かるかどうかはひとまず置いておいて、『とにかくやってみなさい』とトップが後押ししてくれる社風を持っています。同社はこれまで、ホームセキュリティに代表されるいままでにない警備サービスや派生サービスをいくつも開発してきましたが、そうしたイノベーションの数々は、変化を奨励する企業風土があったからこそ生まれたのだと言えます」

 セコムの例にも言えるように、変化を促す社風を整えるには、トップ自らがそれをリードしていくことが不可欠だ。また同時に、現場からの忌憚のない意見をいかに積極的に拾い上げ、変化に結び付けていくのかも重要となる。

「ネットワーク化やプラットフォーム化の進展とともに、社外や異業種との協業が容易になった現在においては、外部の知見や資源を積極的に採り入れることも考えるべきでしょう。たとえば英国では、2012年に始まった政府のデジタル化戦略によって、主要官庁への情報アクセスや申請、手続きなどが『Gov.UK』というひとつのポータルで完結する仕組みが出来上がっていますが、英国政府はこの仕組みを構築するに当たって、政府内だけでなく、外部のソーツリーダー(思想的リーダー)からの提言や提案などを大胆に取り入れています。これが英国の電子政府化を推進する大きな力となったのです」

 澤谷教授は、英国政府の事例のように、ネットワークを活用して外部との協業関係を深化させることが、日本企業に変革を巻き起こすきっかけのひとつになると見ている。

(後編[9/26公開予定]に続きます)

(取材・文/渡辺賢一 撮影/宇佐見利明)