歴史的難題を内外に抱えて、野田新内閣が発足した。「内」にはいうまでもなく原発事故を併発した東日本大震災、「外」には欧米でのソブリン危機である。

 これらはそれ自体、「被災地復興」および「円高対策」といった緊急対応を求めるものだが、より重要なのは、日本が抱える構造問題を改めて浮き彫りにし、新内閣に対し、長年先送りされ続けてきた改革の断行を促しているということだ。

東日本大震災が
浮き彫りにした構造問題

 深刻な原発事故を伴った大震災で浮き彫りなったのは、①従来型地方経済モデルの限界、②需要に応じて必要なだけ供給されるエネルギー・システムの破綻、そして、③日本企業のビジネスモデル・産業構造の行き詰まり、である。

 大企業工場の誘致や、国からの潤沢な財政移転に支えられた従来型の地方経済モデルは、経済成長率の趨勢的低下によってすでに限界に達している。アジアでの富裕層増加という潮流を念頭に、「地域特性を活かして販路をグローバルに求める」新たな地方自立モデルを構築することが求められている。

 その意味では、水産資源・農産物・観光資源に恵まれる被災地において、いわゆる「6次産業化」によって、地場の特性をブランド化していくことに成功すれば、それは新たな地方経済モデルを示すことになる。そうしたビジョンのもとで、新内閣は被災地復興を支援していくことが重要である。