星野 ベースにしたのは、アメリカ留学中に読んだケン・ブランチャードの理論から読み解いた「フラットな組織」です。彼が書いた『社員の力で最高のチームをつくる 〈新版〉1分間エンパワーメント』(ダイヤモンド社刊)に「私にとって最も大切な教科書だ」と推薦文の帯を寄せたのも、それがきっかけですね。

――「フラットな組織」にするために、具体的に何を変えたのでしょう。

星野 人間関係をフラットにするには呼び方から変えないといけません。総支配人もマネージャーも社員も、誰もが「名前にさん付け」で呼び合いました。

 そもそも、なぜリクルーティングがうまくいってないかを突き詰めると、星野一族の特権階級を打破することが最大の問題だったわけです。「社員のモチベーションが大事だ。彼らの発想を活かさないといけない」という時に、一部に既得権があるようでは「フラットな組織」にはなりません。

――御社のエピソードとして有名な、北海道のアルファリゾート・トマムで採用された「雲海テラス」も社員の方の発想でしたね。社員からビジネスアイデアが生まれる変化が表れたのはどれくらい経ってからでしたか。

星野 96年、97年くらいからではないでしょうか。バブルが崩壊した後にも星野リゾートは5年連続で増収増益になっており、メディアにも注目いただいたことも手伝って、面白い人材が入ってくるようになった。それも「フラットな組織」というビジョンを共有できる文化だから門を叩いてくれたと思っています。そのあたりから、いずれ状況は反転してくるはず、と期待が生まれましたね。

――人材が変わってくると共に、社員の育成についても投資してきましたか。

星野 実は、育成へのリソースはそれほどかけていません。モチベーションを最重要指標としたとき、育成ではモチベーションが上がるとは限らないからです。学びたい人は学んでもらって結構なのですけれど、学びたくない人を育成しようとするとモチベーションが落ちてしまうからやめたほうがいい。