東日本大震災の影響を受けたものの、2012年3月期は堅調なスタートを切った原信ナルスホールディングス。商品政策(MD)において昨年から「ニューコンセプトパート2」を導入し、従来のミールソリューション志向に加えて、ビジュアルを重視した売場づくりが徐々に生活者に浸透しつつある。震災後に変化した生活者の消費動向をどのようにとらえ、対応しようとしているのだろうか。聞き手/千田直哉(チェーンストアエイジ)

地元の大学に協力を仰ぎ放射能に
対する正確な理解を深める

──2012年3月期の第1四半期の決算は、売上高が対前年同期比2.3%増の301億2800万円、営業利益が同3.6%増の9億9600万円と堅調でした。

原信ナルスホールディングス<br />代表取締役社長 原 和彦<br />人時生産性を改善しながら<br />付加価値のある売場をつくりだす原信ナルスホールディングス代表取締役社長 原 和彦
はら・かずひこ 1967年生まれ。89年、日本大学農獣医学部卒業。同年、西友フーズ入社。94年、原信入社。2000年、原信常務取締役。2007年、原信ナルスホールディングス専務取締役・執行役員・商品統括担当。08年、同社代表取締役社長。現在に至る。

 東日本大震災の影響を受け、商品供給や物流機能が混乱する中、無我夢中でやってきたのが第1四半期でした。震災直後はお客さまの購買行動が急激に変化したために商品需給のミスマッチが起こり、一部の商品では一時的に調達不足になりました。しかし、商品不足については4月の上旬には徐々に解消していきました。昨年の春先は青果物の高騰で売上が底上げされていましたが、それを超える売上を残すことができたことに、ひと安心しています。

──生活者心理が変化し自粛モードも広がりましたが、どのように対応されたのですか。

 震災直後は社会全体の自粛傾向が顕著となり、食事は外ではなく、自宅で済ませようという内食回帰の動きが強まりました。この動きは、われわれにとっては追い風になったと考えています。4月中旬から自粛モードは下火となり、ゴールデンウイーク前には自粛していては復興にとってプラスに働かないというムードに変化していきました。6月末までにはメーカーさんからの商品供給がほぼ正常化し、震災の影響はほとんど感じなくなりました。7月は梅雨明けが早く、売上は好調に推移しています。

──牛肉をはじめ、放射性物質拡散による生産物の安全性への関心が高まっています。

 注意を払うお客さまは非常に多い。とくに小さなお子さまのいる家庭で顕著です。牛肉の県名表示を始めた小売企業もありますが、これは安全を保証したものではなく、お客さまを余計に惑わすことになると危惧しています。すでにトレーサビリティが確立されているので、お客さまから産地はどこかと店頭で聞かれたらその場でお答えすればよいことではないでしょうか。しかし、牛肉の安全性についてお客さまが不安を感じているのは事実です。このため、当社では牛肉の主な仕入れ先と協力し、7月下旬から入荷する牛肉についてはほぼすべて放射線の検査をおこなっています。検査費用の負担はありますが、それぐらいの対応をしないとお客さまが安心できない状況にあります。