(写真左)三井不動産 ビルディング事業二部
事業グループ 統括 中澤健一氏
(写真右)三井不動産 ビルディング本部 運営企画室 品質管理グループ 統括 伊藤博文氏

 ビルディング本部運営企画室品質管理グループ統括の伊藤博文氏は、「これらの機能はすべて、三井不動産ビルディング事業のブランド・コンセプトである“ワーカーズファースト~働く人にいちばんの場所であること~”の理念から生まれています。“安心・快適・便利”で心豊かに働けるオフィスこそが、個人の力を最大限に引き出すことができる。それが結果的に企業(テナント)の成功につながると考えているのです」という。

BCPへ対応し
非常用発電能力を増強

 同社が今回特に力を入れているのが、災害時におけるBCP(事業継続計画)への対応である。前提として、建物自体が地震や揺れに備えた堅固な構造であることが求められる。

「当ビルは安定した地盤の上にあることに加え、強固な場所打ちコンクリート杭を配して高い支持力を実現しています。また、このビルの耐震構造の特徴は、バランスのとれた架構で地震エネルギーを吸収、コア部に設けた鋼板壁が建物の水平剛性を高め、建物の変形を抑制する仕組みになっています」(中澤氏)

常設の危機管理センター(24時間365日監視対応)。災害発生時には災害対策統括本部となり、各所から集まる情報を基に迅速に対応する(2011年9月1日の防災訓練にて)。

 BCPの要諦は、予期せぬ出来事が発生しても最低限の事業活動を継続、あるいは目標復旧時間内に事業を再開させることにある。東日本大震災の発生を受け、同社ではインフラ(電気や水道)の復旧までの時間を当初設定の48時間から72時間(3日間)に拡大して想定、非常用発電機用のオイルタンクの増設や備蓄品の増量を図った。また1ヵ所の変電所から3回線に分けて高圧電力を引き込む「スポットネットワーク受電方式」を採用、1回線が故障しても他の2回線からの送電が可能となるシステムを構築している。

 さらに同社では、目視では難しい超高層ビルの被災度判定のため、「建物被災度判定システム」を導入。7~8階ごとに設置した地震計の記録を基に、建物各階の被害を推定するもので、データは建物の防災センターに表示されるとともに、ネットワークを通じて三井不動産本社の危機管理センター(災害対策統括本部)に集約される。

 判定結果は短時間に一覧として表示され、「建物の継続使用の可否判断を速やかに行い、在館のテナントのスピーディな意思決定に資することができる」(伊藤氏)という効果がある。

 安全・安心という部分でも高機能のスペックを備えた「横浜三井ビルディング」。首都圏主要都市や羽田空港へのアクセスも至便な好立地とあって、国際都市横浜をリードする新産業創生のグローバル拠点として、今大いなる注目を集めている。

ワーカーズファースト
~働く人にいちばんの場所であること~


先進性を誇るだけのビルではなく、働く人にとってどれだけ使いやすいビルかを第1に考える──というのが、三井不動産のビル事業の基本コンセプト「ワーカーズファースト」だ。10年ほど前から、「安心・快適・便利」をキーワードに、基本サービスの徹底・強化を実施してきたが、これらの基本理念を再整理してさらにブレークダウン。安心を「安心感」に、快適を「心地よさ」に、便利を「時間創造」に進化させるべく、会議や出張のサポートを行う"コンシェルジュサービス"や働く女性をサポートするため"託児所"を開設するなど新しい取り組みを始めている。生き生きと働くことのできる環境を提供し続けることによって、働く人のビルへの愛着を高め、生産性・創造性を高めてゆく。“三井らしさ”とは、これらの理念をビル事業に携わるすべての人びとが共有し、実現に向けて努力することにあるという。