遠山周平

■第2回 Oct.4.2011 遠山周平

強く優しくを理想の男性像とする、
エシカル ドレッシングの薦め

著者・コラム紹介
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  この震災で、もっとも格好よく映ったのは被災地で黙々と作業をする自衛隊員の後ろ姿でなかったか。彼らは強靭な肉体を駆使して瓦礫を撤去するいっぽうで、そのなかから被災者の思い出の品をより分けるという、優しい気遣いを示す。それをハードボイルド小説のヒーロー、フィリップ・マーロゥの言葉を借りて表現すれば『強くなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格もない』となろうか。

 エシカル ドレッシングが理想とする男性像は、強さに裏打ちされた優しさを持つ男。そうなるためには、何を持つかでなく、どう生きるかが重要になってくる。エシカル ドレッシングな作りの服はいくらでも入手可能だが、それを着ただけで人は優しくはなれるわけではない。

 筆者は今年、運動中に肉ばなれになり3ヵ月ほど歩行に苦労した。節電の影響でエスカレーターも止まった駅の階段を難儀して降りていると、下から登ってきた若い男性が「大丈夫、肩を貸しましょうか」と声をかけてくれた。人の流れの妨げになるノロマな亀のような筆者へぶつかるような勢いですれ違い、ときに舌打ちする身なりだけはそこそこの男女に何度も出くわした後だから、思わずその格好を観察してしまう。50か60リットルはあるような大型の登山用リュックを背負ったまま、その男性はコツコツと着実な足取りで、筆者を階下までサポートしてくれた。

 過酷な経験を積んだ男ほど、人に優しくなれる。使い込んだ登山靴やパーカー類。彼のからだの一部になったような道具たちも寡黙にアピールしているように見えた。

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遠山周平 [服飾評論家]

1951年、東京生まれ。雑誌編集者、新聞記者を経て服飾評論家に。豊富な経験と知識を元に、“自ら買って、試して、書く”を信条とする。著書に『洒脱自在 おとなとしてシックに服とつきあう本』(中央公論新社)など。趣味の裁縫技術を生かし、捨てないお洒落生活を実践中。

 


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