「電力不足という課題を背負う日本は、震災でさらに窮地に立たされました。ではどうするか? まずは省エネ。じつは、日本中の照明をLEDに交換するだけでも改善されるのです。家庭用と業務用の電源についていえば、私の試算では約20%の電力を節約できる。産業用電力についても、コジェネレーション設備をフル活用すれば、相当量の省エネが可能でしょう」

 もともと省エネ性能で世界をリードしてきたのが日本のエレクトロニクス技術。省電力性能に優れたLED電球の活用や、産業分野でのコジェネレーション設備、つまり内燃機関、外燃機関等の排熱を利用して、総合エネルギー効率を高めるシステムが従来以上に浸透すれば、その効果は大きいと柏木氏。

「しかし省エネだけで問題は解決しないのは事実。新たなエネルギーを創造する『創エネ』が重要な鍵になるのです」

省エネだけでは解決できない。
だからこそ創エネに挑戦する

 そこで注目を集めているのが再生可能エネルギー。ただし、このエネルギーの活用のためには、多様な技術の結集が必須だ。

「従来の電力供給システムから生まれる電気と違い、再生可能エネルギーの電気は不安定です。これを制御するため、ICTをはじめとする多様な技術が不可欠になる」

 柏木氏の言う「多様な技術」はICTのみではない。ソーラーパネルなどによって生産された電力の余剰部分を蓄積するための蓄電池技術、それを市街などコミュニティで共有するための仕組みづくりの技術、さらに、ソーラー発電のスピーディーな浸透をもたらす政治・行政面の協力もまた必要だという。

「8月末に再生可能エネルギー特別措置法が成立しました。太陽光だけでなく風力や地熱など、自然由来の再生可能エネルギーの利用を進展させるのに、追い風となるルールが生まれた、と私はとらえています。今後も新しいルールの制定などを進めつつ、技術を進化させていくことが求められていくでしょう。

 たとえば太陽光。現状ではソーラーパネルの設置に多額の費用が必要ですが、大規模ソーラー発電設備が次々に造られていけば、市場原理でパネルの価格は下がる。そうなれば家庭用パネルの需要も一気に伸びます」

 メガソーラー時代の到来には、新ルールが不可欠だ。法整備が進めば、被災地復興の新産業としての可能性も出てくる。

「産官民が一体になって、こうした創エネを実現していくと、街も生活も変わります。都市のビル群や郊外の住宅街が、太陽光発電の発電所としても機能する。そこで生産した電力の余剰分は、ハイブリッドカーや電気自動車などの新世代自動車(PHV/EV)が蓄電池として貯蔵し、時には電力を運ぶ乗り物としても機能する……というような近未来図が描けるようになります。それがスマートコミュニティであり、スマートシティと呼ばれているものです」

変わる、住宅コミュニティ
住宅コミュニティスマートコミュニティの主役は、ソーラーパネルを備えたスマートハウスと新世代自動車(PHV/EV)といわれる。双方の共存が浸透すれば、発電と蓄電を住宅地や商店街で融通し合い、循環させる仕組みや都市の発電設備との併用による効率化も実現する。拡大画像表示