「そうした変化とともに、『顧客体験をいかに高めるか?』という視点で製品やサービスを提供することがますます重要になっています。たんに製品技術やサービス力を磨くだけでなく、顧客中心の視点で『満足してもらう』ためのサービスをトータルにデザインしていく必要があるのです。そのためには、モノづくりや自社単独のサービス強化などに主眼を置いたこれまでの組織を抜本的に見直す必要があります。サービスをデザインする前に、まずは組織そのものを時代の変化に合わせてデザインしていくことが求められているのです」

「欠品している色の口紅」
を何とか補充したい

 新たなサービスデザインを描き出すため、組織のデザインを大胆に見直した例として澤谷教授が挙げるのが、ERP(基幹業務システム)大手の独SAPだ。

「SAPは組織変革の効果を高めるため、最初は戦略部門、次に製品部門、最後に営業部門という順序で変えていくシナリオを設定しました。“流れ”をつくることで会社全体に変化を行き渡らせる方法を選んだのです。このように段階的に組織を変えていくデザインを選択したのはトップの決断でしたが、結果的に成功だったようです」

 では、サービスデザインはどのように行うべきなのか。 澤谷教授は「難しく考える必要はありません。ユーザー視点で『目の前にある問題』を発見し、どうすれば解決できるのかをあらゆる角度から考えることがサービスデザインであると言えます」と語る。

 具体的な例として澤谷教授が挙げたのは、1990年代からRFIDの研究に携わり、「IoT(モノのインターネット)の父」と呼ばれるケビン・アシュトン氏の事例だ。

「アシュトン氏は英国でP&Gのプロダクトマネージャーを務めていた時代、得意先の化粧品売り場に陳列されている口紅の中に、どの店に行っても欠品となっている色の口紅があることに気付きました。それを見て『もっと早く欠品に気付き、お客さま好みの商品をタイムリーに補充できる仕組みはできないものか?』と思ったことが、後にRFID技術と出会い、専門的に研究に携わることになった出発点だったと言います。先に技術ありきではなく、目の前の課題から出発したことが革新的な商品管理の仕組みを生んだわけです」