[東京 6日 ロイター] - 金融庁の2016事務年度(16年7月―17年6月)「金融リポート」案で、5割強の地方銀行の貸出・手数料ビジネス収益が赤字になったと指摘していることがロイターの入手した資料で明らかになった。金融庁は赤字になった地銀の多くが有価証券運用益への依存度を高めていると指摘。金利リスク量が増加していると警鐘を鳴らしており、持続可能なビジネスモデルを早急に構築するよう改めて求めている。

金融リポートは、行政方針にもとづいて金融庁が1年間に行った金融機関へのモニタリングや企画部門、国際部門の取り組みを網羅的に収録し、年に1回、公表される。金融庁は来週にもリポートを正式発表する予定だ。

金融庁は前年の金融リポートで、人口減や低金利の持続により、2025年3月期には、6割を超える地銀で顧客向けサービス業務(貸出・手数料ビジネス)が赤字になると試算した。

しかし、2017年3月期決算をもとに金融庁が算出し直した結果、前年の推計を上回るスピードで顧客向けサービス業務の利益の減少が進み、すでに5割超の地銀が赤字になったと明記した。

地銀の中には、純利益を確保しようと有価証券運用やアパート・マンション向けローンなどに傾斜している銀行もあるが、金融リポートでは、将来的に金利など経営環境が改善し、従来のように長短金利差による収益確保が可能な状況が実現するかは不確かだと警鐘を鳴らした。

さらに、金利上昇の弊害として、1)金利上昇で調達コストが上昇する一方、預貸率が低いまま金利競争が継続することで、長短金利差が改善しない、2)低金利化での超長期国債への投資による金利リスクが顕在化し、含み損が発生・拡大する、3)金利上昇で顧客の借入金の返済負担が重くなり返済可能性が低下する結果、引当金の積み増しが必要になり信用コストが増加する――といった事例を挙げた。

金融リポートでは、借り手から地銀の融資姿勢への厳しい指摘も盛り込まれた。金融庁は前事務年度、地銀をメインバンクとする中小企業を中心に約3万社にアンケート調査を実施。事業の将来性が高いものの、信用力が低い企業には貸し出さない「日本型金融排除」の実態把握を行った。

8901社から寄せられた回答を集計した結果、2002社が要注意先以下の企業だった。

しかし、経営課題を抱えた債務者区分下位の企業に対する地銀の訪問が少ないことや、資金繰りに困った要注意先企業が、十分に新規融資を受けられていない実態が浮き彫りになったとしている。

金融リポートでは、今回新たに貸出残高が増加しているアパマンローンや銀行カードローンについて、1つの章を割いて分析が掲載された。

リポートは、不動産業向け貸出が金融機関の健全性に直ちに影響することはないとする一方、不動産向け融資が拡大を続けているため、引き続き金融機関の融資体制を注視していくとした。

金融庁は、個人の長期・分散・積み立て投資を促す観点から積み立てNISAを創設。2018年からスタートする。金融庁は毎月分配型投信について、運用益を分配に回すため複利効果が得られないなどと批判してきたが、金融リポートでは、毎月分配型が投信全体に占める割合が残高ベースで6割弱まで低下したものの、「依然として高い状況にある」と指摘している。

(和田崇彦 編集:田巻一彦)