価値が落ちる住宅、落ちない住宅に二極分化

 市場価格3000万円の中古住宅を、10件並べてホームインスペクション(住宅診断)を行うとする。そうすると、「ああこれは3000万円の価値はないな」と思えるものもたくさんあるし「これが3000万円ならお買い得」と思えるものもある。要するに一律の、表面的な格付けと、専門家が見る本当の価値とに大きなバラつきがあるのだ。

 また以前のコラムでも書いたとおり、日本の設計・施工技術は世界一。住宅の寿命は【設計】【施工】【点検・メンテナンス】の三拍子が揃えば、木造住宅は最低でも100年以上は長持ちする。にもかかわらず一般的に「木造住宅は弱い・長持ちしない」というイメージがあるのは、木造住宅は、現場での工事段階で【手抜かり】や【手抜き】が生まれてしまう余地があるからだろう。

 例えばプレハブ住宅の場合には、80~90%を工場でつくり、現場ではほとんど組み立てるだけ。木造住宅の施工プロセスも以前と比べればずいぶんとシステマチックになったが、それでも現場による施工、つまり大工さんの技術や現場監督さんの監理に依存するところが大きいのだ。

 これからは「あいかわらず価値が落ち続ける住宅」と「価値が落ちない住宅」との二極分化が始まる。正確にいえば、両者のレンジの中で価格に大きなばらつきが出る時代がしばらく続くのだ。

 もしこれから住宅を購入するならもちろん、価値が落ちない、落ちづらい住宅を選択しなければならない。

 地価が上昇をしている高度成長期ならいざ知らず、バブル崩壊から失われた20年を経てデフレが続く我が国において、地価の上昇は見込めるはずもない。日本の土地、とりわけ住宅のそれは他国と比べても割高であり、今後例えば郊外住宅地の地価は30パーセント以上下落するものと筆者は見ているが、加えて建物の価値も下落してしまうのでは、少なくとも経済合理的には住宅を購入する意味はない。

 建物価値が経年で下落するのは、先進国でも日本だけだ。日本でもようやく、この課題を打開すべく政策面でもいくつかの動きが出始めている。紙幅の関係上、詳細をここで言及できないが、省エネ性、耐震性、維持管理の容易性などの認定基準を定め、長持ちする新築住宅を建てようという「長期優良住宅認定制度」や、住宅の各種情報を一元管理し、維持管理を容易にする「住宅履歴情報(いえかるて)」システム、瑕疵保険制度などがその一例だ

 次回、最終回ではそれら政策の行方や住宅市場の展望をあげつつ、「不動産を買うのがいいのか、買わないのがいいのか」というテーマに迫りたいと思う。

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