賃貸住宅市場は圧倒的な「借り手優位」

 一方で賃貸住宅市場。家賃は下落傾向、空室は増加し続けている。更新料は従来よりもとりにくくなり、敷金や礼金もしかり。家賃交渉をする賃借人も増加するし、賃貸人はそれに応じざるを得ない情勢だ。

 一部の人気物件を除いて、日本の賃貸住宅は目を疑うような空室率である。借りる側から見れば家賃が安くなり、可処分所得が増加するのは喜ばしいことだろう。

一生賃貸派が増えてきた。マイホーム派はどうする?!

 

 市場では「借り手優位」の状況が強まっており、賃料の低下や入居後一定期間は賃料をゼロにするフリーレントが広がっている。また、「貸し手優位」の時代に定着した慣行の見直しも進んでおり、たとえば入居時の礼金、敷金をなくす物件が増えている。

 退去時の敷金精算(現状回復義務)についても、国交省や東京都がガイドラインを出すなどして、経年劣化や通常使用にともなう損耗については貸主負担という考え方が定着してきた。

賃貸住宅はやっと面白くなってきた

 さくら事務所にはたくさんの住宅購入予備軍が相談に見えるが、彼らの中には意外とこんな意見が多い。

「マイホームを買いたいというよりは、住みたい賃貸住宅がないんですよ」。

 多くの人が、こんな思いを抱きながら消極的な住宅購入をしてきた。ところが最近は、硬直化し工夫の足りなかった賃貸住宅の世界にも、面白い物件がたくさん出ている。

 そうした動きのひとつがいわゆる「コンセプト物件」。入居者のライフスタイルを具体的に想定し、たとえばバイク好きのため室内にバイクを置くスペースを設ける、楽器を思い切り演奏できるよう防音仕様にする、セキュリティや設備に女性の意見を反映させるなど。

 このような物件は、各地でゲリラ的に手掛けられるケースが多いが、コンセプト物件専門に紹介、仲介している会社もここ最近、格段に増えた。

 主に比較的若い世代をターゲットに、都市部で人気があるのが「シェアハウス」や「ルームシェア」だ

「シェアハウス」では、社宅や中古戸建てを転用した建物に、他人同士が共同で暮らす。専用の個室があるものの、リビング、キッチン、トイレなどは共同が一般的だ。

 以前はゲストハウスと呼ばれ、短期の宿泊者や旅行者向けのイメージがあったが、最近は一般の入居者も増加。都心部でも安い賃料で住居を確保できるほか、いろいろな入居者とコミュニケーションを楽しめる点が好まれている。

 一方、「ルームシェア」は通常の賃貸物件を知人、友人、兄弟などと一緒に借りるもの。個室を確保しながらリビングなどを共同で使う形はシェアハウスと同じだが、部屋の借り方は通常の賃貸と同じ。貸主が、複数で住むことを了解すればOKだ。