まず、これだけ世界の経済・金融情勢が不確実性を増している中で、長期の借入を行い、いわば人生をフィックスしてしまうことの是非の問題がある。(「10年以上のローンはだめです」という人気コラムがあった)。

 次に、「単独世帯」を標準モデルとして考えると、高度成長期の「夫婦と子ども二人世帯」に比べてはるかに流動性の高いことが容易に想像されよう(たとえばカップルになりやすい等)。そうであれば、単独世帯にとっては住み替えの自由がより大きな価値となるはずだ。また、持ち家は賃貸に比べて通勤時間が長く、ワークライフバランス上も問題なしとしない。

 このように考えれば、21世紀のわが国の住宅政策の柱は、人生のライフステージに合わせて自由に住み替えのきく良質な民間の賃貸住宅の供給に重きを置くべきではないだろうか。わが国の借家は、ワンルームマンションのほとんどが借家であることもあって、移住面積が持ち家の半分以下でしかない。これでは、人々が持ち家に流れるはずである。良質な賃貸住宅は、まず居住規模の拡大を目指さなければならない。

 さらに付言すれば、欧州のように原則として家具付き賃貸住宅の普及を図るべきである。外国の友人が家具を積んだ引っ越しトラックを見て「家具はその家の身丈にあわせて購入したものなのに、なぜ身丈の違う次の家にわざわざ運んでいくのか」と言った言葉が忘れられない。

公共住宅はコレクティブハウスを軸に

 持ち家購入に対する税制優遇措置を廃止し、その代わりに、家具付き賃貸住宅への家賃補助を行えば、持ち家政策の転換はさほど難しいことではないと思われる。では、公共住宅はどうするか。

 単独世帯を基準モデルとして考えれば、これからの公共住宅はすべてコレクティブハウス(たとえば1階が共有スペース、2階が寝室)にするくらいの気構えで臨むべきではないか。少子高齢化が待ったなしの状況であり、また人と人との絆の回復がこれだけ要請されているわが国の現状に鑑みれば、コレクティブハウスほど、ぴったりした施策はないと考える。

 コレクティブハウスは、人と人との絆の回復に資するだけではなく、次のようなメリットを併せ持つと考える。