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リーダーの決断

オークション方式による掟破りの株式公開プロセス
グーグル:上場しても「らしさ」を失わない

Google's CEO on the Enduring Lessons of a Quirky IPO

エリック・シュミット
2011年11月9日
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2004年、グーグルが上場予定であることを発表すると、メディアのほとんどは、上場すれば会社は変貌し、グーグルらしさを失うと報道した。自社株の持ち分によって、「持つ者」と「持たざる者」とが仲間割れし、才能ある人材は株を売却してグーグルを辞めるだろうとも予想した。また、上場企業らしい体裁を整えれば、切れ味が鈍るだろうという批判が大半だった。だが、グーグルは変わらなかった。基本的に当時と同じ経営陣が、非上場企業だった頃と同じ価値観に基づいて、グーグルを経営している。

同社CEOのエリック・シュミットによれば、自分たちの価値観を貫くことができた理由の1つは、慣例にとらわれない上場手法を選んだことにあるという。同社はより透明でオープンな手法を求めた。大手機関投資家だけではなく、グーグル・ユーザーにもIPO(新規株式公開)への参加機会を与えたかったのだ。その結果、ダッチ・オークション方式のIPOの仕組みを構築し、それを決行した。本稿では、その一部始終を振り返る。

「グーグルらしい」IPOを目指して

 もう6年前になるが、上場までの道のりは、いまも逐一覚えている。それは、いかにも「グーグルらしい」体験で、今日に至るグーグルの本質を如実に示した出来事だった。

エリック・シュミット
Eric Schmidt
グーグル会長兼CEO。パロアルト研究所、ベル研究所、ザイログ等を経て、サン・マイクロシステムズに入社。Java の開発とインターネット戦略の立案を導き、後に最高技術責任者と執行役員を歴任。1997年からはノベルのCEOを務める。2001年3月にグーグルの会長に就任し、同年8月からCEOを兼任。以来、創業者のラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリンらと共に、グーグルの経営を指揮している。

 IPO(新規株式公開)は会社を変貌させる。メディアの多くは、上場すれば我々がグーグルらしさを失うと信じ込んでいるようだった。ニューズ・レター『サーチ・エンジン・ウォッチ』の編集者で、業界では有名なコメンテーターのダニー・サリバンは、「上場はグーグルにとって最悪の出来事の1つになるだろう」とコメントした。

 自社株の持ち分によって、「持つ者」と「持たざる者」とがいきなり仲間割れすると世間は予想した。才能ある人材は株を売却してグーグルを辞めるだろう。そして、ウォール街を喜ばせることに目が向いて、グーグルの誇る客観性と独立性が失われるだろう。また、上場企業らしい体裁を整えれば、切れ味が鈍るだろう。

 つまるところ、人々は、グーグルが前途洋々の若手ベンチャー企業から成熟した上場企業へと転換することで、グーグルを革新的企業にした「変わり者」の精神が失われると危惧したのである。

 しかし、そうはならなかった。私は、かつてといまとでグーグルの本質に何の変わりもない──規模がかなり拡大しただけ──と心から信じている。1つの出来事に着目しすぎるのもよくないが、自分たちの価値観を貫くことができた理由の1つは、慣例にとらわれない上場手法を選んだことにある。

 グーグルの創業者、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンは、IPOの目論見書に掲載した「創業者からの手紙」の冒頭で、「グーグルは慣例にとらわれない企業であり、今後もそのような企業になるつもりはありません」と綴っている。そして、彼らは未来の株主に向けて、グーグルはホームランにも大失敗にもなりうるようなリスクの高いプロジェクトに投資する可能性があると警告した。

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エリック・シュミット(Eric Schmidt)
Google会長。1955年生まれ。2001年から2011年までGoogleの最高経営責任者(CEO)を務め、創設者のサーゲイ・ブリン、ラリー・ペイジとともにGoogleの技術や経営戦略を統括してきた。Google入社以前は、ノベルの会長兼CEOやサン・マイクロシステムズの最高技術責任者(CTO)を務めていた。それ以前は、ゼロックス Palo Alto Research Center(PARC)で研究員を務め、Bell Laboratoriesやザイログに勤務していた。プリンストン大学で電気工学学士号、カリフォルニア大学バークレー校でコンピュータ サイエンスの修士号と博士号を取得している。2006年には、全米工学アカデミーの会員に選出され、2007年には、アメリカ芸術科学アカデミーのフェローに就任。新アメリカ財団の理事会会長のほか、2008年からはプリンストン高等研究所の理事も務めている。
 


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