「100回」と言っても、「1日3回」

「議論を聞いていまして、いささか悲しい思いになってきました。認知症の人が在宅で暮らしていくということを、どれくらい理解していただいた上で議論が進められているのかなと考えざるを得ません」

「100回以上といっても、1日3回です。朝昼晩と行けば3回になります。事情としては、実際に生活していく上では必要だというふうにも言えますし、本当は身体介護として入らなければいけないのに、回数を入れないから、家事援助という形で回数多く入ることで身体介助もカバーして在宅をやっと成り立たせているというのが実情だということもぜひご理解いただきたいと思います」

 確かに、1日に3回の定期訪問を重ねれば月に90回となる。朝昼晩の訪問を必要としているのは、どんなサービスか。ちょっと考えればすぐ思いつく。食事である。本当にそうなのか。当事者の介護状況をそれぞれの自治体に聞いてみた。

 まず、最も注目された101回の標茶町。釧路市の北に位置し、全国で6番目に広い自治体だが、人口は7700人。町役場の保健福祉課介護保険係の担当者が話す。

「該当者は、要介護3で80歳の1人暮らしの方です。朝昼晩の食事作りとその後の服薬が欠かせないので、毎日3回ヘルパーが入っています。山間部に住んでいて遠いため、訪問する介護事業社としては採算がとり難いですが」

「本人は、人が多いところは嫌いなので、特養に入居するつもりはありません。デイサービスにも行きたがらない」

「昨年の9月はたまたま体調が悪化してヘルパーの訪問回数が少し増えたが、いつもは日に3回で、月に90回です。入浴はどうやら介助なしで頑張っています」

 月に90回の訪問介護がある宮城県美里町の保健福祉課の担当者は「その方は要介護2で1人暮らしです。認知症のため調理ができない。ヘルパーが通っているのは日に3回の食事と薬のためです。調理して、食事中に見守り、食後に薬を飲んでいるか確認しています」と話す。

 やはり、月に90回のヘルパー訪問を受けている住民がいるのは千葉県君津市。要介護は2である。高齢者支援課の担当者が話す。

「日に3度の食事作りと服薬確認のためです。本人は80歳代の独居です。家族がよく通ってきて頑張ってます。家族が入浴を手助けし掃除や洗濯など身の回りの世話もしています」

 東京都足立区には、月90回の訪問回数の住民が2人いる。「2人とも90歳以上です」と話し出したのは皆葉英男介護保険課長。

 96歳の要介護4の男性と91歳の要介護2の女性である。2人に共通しているのは、一人暮らしで身内がいないことと軽度の認知症のため成年後見人が就いていることだという。そして重要なのは「在宅生活を望んでいることです」。「ヘルパーが日に3回赴き、調理と服薬確認をしています」。