――冒頭の事例のように、一度自殺をはかった方が、再自殺するケースはやはり多いですか。

「そうですね、一度でも自殺しようとしたことがある方は、その後、再自殺をはかって亡くなってしまうリスクが、そうではない方の何倍も大きいです。

 だからこそ、救急搬送されてきた方たちへの対応が重要になります。

 前回、助けたのに、何ヵ月から数年後にまた運ばれてきて、今度は助けられなかった、ということは、年に一度ぐらいはありますね。

 ただ、横浜市は医療機関がとても多いので、一度目は我々が対応し、退院して行かれたとしても、次にどうなったかは知りようがありません。必ずしも、うちのセンターに運ばれてくるとは限らないからです。

 実際どれだけの人が、その後自殺を繰り返し亡くなられたのかは、たまたま再自殺の時もうちに搬送されてきた場合にしか、我々には分かりません。すごく気になるのですが、知ることができないんです」

――救命救急センターに精神科医が常駐していることのメリットはなんでしょう。

「精神科がある一般的な病院では、搬送されて、身体の方の治療をして、回復したところでようやく救急医から『自殺未遂で入って来た患者さんがいます。診察をお願いします』と依頼が来て、精神科医が出向くのが普通です。

 自殺の手段で一番多いのは薬物によるものなのですが、だいたい2~3日もすると身体はもう、明日退院できますという状態になっています。そこから精神科医が登場して、『はじめまして』では、結局、やれることも、残されている時間も圧倒的に少ない。

 一方、うちのように精神科医が常駐してれば、患者さんに対して、してあげられることも、いろいろ検討したり相談したりできる時間も長くなります。それはメリットですね。

 もう1つは、僕は常駐しているので、基本、搬送されてきた患者さんは僕が担当します。入院している間は毎日、同じ人間が診察にあたるわけです。それも、入れ替わり立ち替わり違う先生が診るより、患者さんはストレスがかからないし、安心できるのではないでしょうか」