イノベーションの「賞味期限」

「技術や特許ならいくらでもある。しかし、ここ50年、わが社で新しい事業なんて生まれていませんよ。戦後20年くらいまでの間に先人が生んだ事業を、大きくしてきただけです」。

 日本を代表する、ある一流メーカーの方の言葉である。

 どうやら日本にはイノベーションが不足しているらしい。そして、戦後の日本をけん引してきた1950年代のイノベーションが賞味期限を迎えつつあることも、ここ20年の成長の鈍化・停滞を見れば、ほぼ自明である。

 実際、多くの企業にとって、「イノベーション」は、昨今の戦略的課題として位置づけられている。しかし、確たる基幹事業を持ち、成功を経験した会社であればあるほど、リスクを伴う新しいビジネスに本腰を入れられないでいる。いわゆる「イノベーションのジレンマ」だ。

「新規事業プランコンテスト」を定期的に行い、社員の持つ新事業のアイデアを吸い上げようという企業も少なくないが、その結果として、ばんばん新規事業が生まれているという会社はほとんどないだろう。

 どうやったら、企業内で、次の時代の基幹ビジネスになり得るような新しい事業を創造できるのか。いや、どんな人であったら、新しい事業を企業の中に確立させることができるのか。

 ワークス研究所では、企業内で新しい事業を立ち上げる人材とは、いったいどのような考え方をし、どのように行動しているのかを明らかにするため、「事業創造人材」と言われる人たちを観察し、インタビューし、その上司の話を聞く、という調査を実施した。そして、事業創造人材に共通する5つの思考特性と6つの行動特性を見出した。