意識して仕事から離れることは、心身の健康を保つだけでなく、仕事に戻った際のパフォーマンスを向上させる効果があることは知られている。にもかかわらず、多くの企業で有休取得が進まないのはなぜか。それは上司に責任があると筆者は主張する。部下を効果的に休ませ、チームの成果を上げる方法とは。


 休暇は企業のためになるという証拠が数多く報告されている。休暇を取ることで生産性が向上するだけではない。職場に蔓延しかねないネガティブ姿勢への免疫力が、チームに身につくのだ。

 では、休暇の投資利益率(ROI)がそれほど優れているにもかかわらず、休暇を取る日数が減っているのはなぜなのか。

 ある調査では、休暇を取ると上司からの評価が下がると社員が恐れていることが明らかになった。そう、上司であるあなたのせいなのだ(悪いのはいつもあなただ)。この厄介な思考パターンを変えるには、創造性を発揮して、部下たちに休暇を取らせる必要がある。

 まず、休暇の効果を明らかにしよう。チームミーティングの数分を使って、休暇のメリットに関する研究のいくつかを共有するのだ。

 ロン・フリードマンが2015年にHBR誌に寄稿した論考は、休暇のメリットに関する事実の宝庫だ。反応時間や創造性、そしてエンゲージメントへの効果が明らかになっている。また同論考は、休暇を取らないことのリスクも浮き彫りにする。衝動性や集中力不足、そしてネガティブな態度が見られるようになるという。このような統計的事実をあなたのチームに伝えれば、「休暇を使い切ると、上司からよく思われない」という誤解を解く助けになるだろう。

 職場で大切なことのすべてと同様に、休暇取得順守のカギも、利用状況を測定して管理することにある。各社員が休暇を何日取っているか、その状況を記録し、最新状況を定期的に知らせるといい。理想を言えば、休暇を年初のパフォーマンス計画にうまく組み入れるのがベストだ(ある研究結果によれば、 1ヵ月以上前に計画された休暇には疲れを回復させる効果があるのに対し、直前になって決めた休暇はストレスが多く、せっかくの休みのプラス効果を台無しにしかねない)。

 社員に有給休暇を完全に消化させることが難しそうであれば、利用状況を公表するといい。いい意味でのピアプレッシャーを利用するのである。目に見える印(星印やチェックマークなど)を使って、休暇を消化することを成功にそれとなく結び付けるのもいい。

 一部の社員にとって、休暇を取らない陰には身勝手な理由がある。不在の間のための引き継ぎ準備には、信じられないほど多大な努力を要するため、そこまでして休暇を取る価値はないと結論づけているのだ。