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新生銀行:事業戦略とITの融合

Radically Simple IT

デイビッド M. アプトン,ブラッドレー R. スターツ
2011年11月4日
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多額の不良債権を抱えて破綻した日本長期信用銀行を前身とする新生銀行では「質の高い商品とサービスを、便利で使いやすく、低コストで提供する」というバリュー・プロポジションを実現するために、旧システムを廃棄し、新しいエンタープライズ・システムを導入することが不可欠であった。CIOのダナンジャヤ・デュイベディを核とするチームは、従来の開発手法とは異なる「パス方式」を採用した。

それは「事業戦略とIT戦略の融合」「シンプルな技術」「モジュール化」「ユーザー重視のシステム」「システム改善へのユーザーの参加」をモットーとし、まさしく事業とケイパビリティとを支援するシステムを構築する手法であった。

カテドラル方式から「パス方式」へ

 経営者にとって、ITプロジェクトはいまも頭痛の種である。それは、専用のシステムを構築する場合でも、ほぼ万能なパッケージ・ソフト(汎用ソフトウエア)を導入する場合でも、事情は変わらない。

デイビッド M. アプトン
David M. Upton
ハーバード・ビジネス・スクールのアルバート J. ウェザーヘッド3世記念講座教授を務める。生産管理、ITマネジメントおよびIT戦略を専門とする。

ブラッドレー R. スターツ
Bradley R. Staats
ハーバード・ビジネス・スクール博士課程卒業。

 ITシステムの根本的な問題は、多くの場合、オープン・ソースの推進者エリック・S・レイモンドが「カテドラル(伽藍)方式(注)」と名づけた開発手法によって設計されていることによる。

 中世ヨーロッパで建立されたカテドラルのような大建造物と同じく、ITプロジェクトは膨大なコストと時間がかかり、またプロジェクトがみごと完了し、カット・オーバーに至らない限り、価値はもたらされない。しかも、最終的に出来上がったITシステムは柔軟性に欠け、プロジェクトの開始時点であった数年前のビジネス要件にしか対応できていない。

 パッケージ・ソフトの柔軟性は、このところ改善されてきてはいるものの、新たに出現したビジネスチャンスを生かすために、エンタープライズ・システム(全社規模で導入されるシステム)を再構築するのはとんでもなく高くつき、難しいと感じている企業は多い。

 スイッチを入れた瞬間、レガシー化してしまうようなITシステムはいらない。一方、カット・オーバーからかなりの時間が経過していても、迅速かつ継続的に改善できるシステムは構築可能であり、またそうあるべきである。

 我々はこの10年間、ITシステムの設計と導入について研究し、その過程で多くの企業のお手伝いをしてきた。その作業を通じて、コスト削減だけでなく既存事業の成長と新規事業への参入を支えるアプローチとは何であるかを特定することができた。

 我々はそれを「パス方式」と命名した。というのも、プロジェクトを開始する前にシステムに必要な規格をすべて定義する代わりに、このアプローチでは、システムが徐々に発展していくようなパス(経路)をつくることが焦点となるからである。

【注】

レイモンドが1997年に発表した論文"The Cathedral and the Bazaar"(伽藍とバザール)のなかで、ソフトウエア設計者たちが開発計画を立案し、そのすべてを管理するという伝統的な開発手法を「カテドラル方式」と呼んだのが始まりといわれる。

次のページ>> パス方式の原則
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