ウォークマン

 ソニーのウォークマンと言えば、iPodと人気を二分するポータブルプレーヤーブランド。ここ最近はハイレゾ対応モデルを中心とした幅広いラインナップで、入門層からマニア層まで人気を集めている。

 そんなウォークマンの新モデルがIFA 2017で発表され、日本でも10月7日に発売される。気になっている人も多いはず。

 本特集では、ウォークマンのほか、同時に発表されたワイヤレスヘッドフォンも含めて、注目の新製品を詳しく紹介していく。まずは「ウォークマン A40」シリーズから。

ぐっと落ち着いた5色のカラーを採用
2万円台の「ウォークマン A40」シリーズ

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NW-A40シリーズの正面。アルミダイキャストのボディーはデザインも含めてほぼ同じで、UIなども共通。カラーの違いが一番の差だ

 まずは、エントリークラスとなる、ウォークマンA「NW-A40」シリーズ。モデルはノイズキャンセル対応イヤフォンの有無と内蔵メモリーの違いで、4つのモデルがラインアップされている。

 イヤフォン付属モデルが、内蔵メモリー32GBの「NW-A46HN」(実売価格 3万6000円前後)、16GBの「NW-A45HN」(同3万1000円前後)。イヤフォンが付属しないモデルが、内蔵メモリー64GBの「NW-A47」(同3万9000円前後)、16GBの「NW-A45」(同2万3000円前後)となる。

 内蔵メモリーが一番多い64GBモデルをイヤフォンなしとしたのは、ユーザーの要望に応えたものだという。

 たくさんの楽曲を保存して持ち歩きたいというユーザーの多くは、すでにそれなりのヘッドフォンやイヤフォンを持っていると思われるので、実情に即したものと言える。

ソニー
5色のカラバリを用意
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背面。NFCマークが中央付近にあるほか、下にはウォークマンのロゴマークと製品の表示が印刷されている
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底面。ウォークマン専用端子と3.5mmのヘッドフォン出力を備える。右にあるのはストラップの取り付け部分
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左側面にmicroSDカードスロットがあり、最大128GBのメモリー拡張が可能となっている
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ディスプレーはタッチパネルだが、右側面には電源ボタンをはじめ、基本操作用のボタンが並んでいる

 デザインは、先代の「A30」シリーズと同様だが、5色用意されたカラーバリエーションが、ムーンリットブルー、ペールゴールド、グレイッシュブラック、トワイライトレッド、ホライズングリーンと、ぐっと落ち着いた色合いとなっており、随分と印象が異なっている。

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NW-A40と付属するイヤフォン。本体色と統一された色のものが付属する。ノイズキャンセルタイプでなかなかの高性能だ

 従来機に比べるとなかなか大人っぽい配色で、筆者のような中年男性でもどの色も選びやすいと感じた。普段着感覚というか、ファッションとも合わせやすい色だ。

 もちろん、イヤフォン付属モデルは、ハウジングやイヤーチップ、ケーブルまで色を揃えている。

APEやMQAといった新フォーマットに対応

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NW-A40のホーム画面。上部に「DAC」にアイコンが加わったのが大きな違い。USB DACモードへの切り替えが可能だ

 対応する再生フォーマットもさらに強化され、リニアPCM最大384kHz/24bit(FLAC)、最大192kHz/32bit(WAV)対応に加え、DSD最大11.2MHz(PCM変換再生)やAPE、MQAといったオーディオフォーマットにも対応した。

 補足すると、APEは「Monkey's Audio」という音楽ソフトの可逆圧縮フォーマットであり、MQAはメリディアンが開発した高音質・低容量が特徴のハイレゾフォーマット。これらのファイルへの対応を含め、このクラスではほかではあまりないレベルの高機能だ。

 そして、エントリークラスの製品とは思えないレベルの高音質設計もポイントだ。フルデジタルアンプ「S-Master HX」の電源に、高音質コンデンサーの「POSCAP」を5つ使用。「S-Master HX」のICと基板の実装では、ソニー専用の高音質はんだを採用している。

 そして、基板の回路設計も見直され、バッテリーから電源IC、S-Master HXへの経路が直線的なパターンとなり、経路の最短化が図られている。

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設定にある「高音質設定」。基本的には従来通りで、好みに応じて切り替えて使える

 高音質機能としては、CDや圧縮音源をハイレゾに迫る音質にアップコンバートする「DSEE HX」、アナログアンプに近い低音感を再現する「DCフェーズリニアライザー」、サラウンド機能の「VPT」、曲による音量差をなくす「ダイナミックノーマライザー」などがある。また、ワンタッチでソニーおすすめの設定に切り替える「ClearAudio+」も備える。

 基板や金属部品を固定するビスにカスタム品の導電ビスを使用したり、バッテリー部分の配線は低抵抗ケーブルを採用したりといった従来からの高音質設計も踏襲。

 プリント基板にフィルドビア構造を採用したことや、厚膜銅箔プリント基板とするなども同じだ。

 操作画面はほぼ共通で、機能としても音楽再生機能のほか、再生スピード調整ができる語学学習モードや、ワイドFM対応のFMチューナーを内蔵する。

 このあたりは従来機と比較して大きな違いはないが、注目の新機能としてUSB DAC機能を搭載している(USB DACとしての解説や使用レビューについては、第3回でじっくりと紹介する)。もちろん、従来どおりポータブルヘッドフォンアンプなどへのデジタル出力も行なえる。

 ノイズキャンセル機能は、付属イヤフォンか、対応したノイズキャンセル対応のイヤフォンを接続したときのみ利用できる。ノイズキャンセル機能のためのマイクを備えているモデルでのみ使えるということだ。

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ノイズキャンセル機能の設定画面。環境別の選択やノイズキャンセル量の調整が行なえる
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音楽再生中でも周囲の音を明瞭に聴き取れる「外音取り込み」機能も、取り込む音の音量レベルを調整できる

 ノイズキャンセル機能は、飛行機内などのシチュエーションに合わせて選べるが、基本的には「フルオートAINC」を選んでおけば、状況に合わせて最適なノイズキャンセルが行なわれる。マイクを使って周囲の音を拾う「外音取り込み」機能も備えている。

音質的にもぐっと上級機に近づいた!!
バランス出力にも対応の「NW-ZX300」

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NW-ZX300の正面。サイドがラウンドしたフォルムなどは「ZX100」のイメージを残すが、アルミ削りだしのボディーとなり、剛性感は別物と言えるほど変わった

 同時に発表されたミドルクラスの「NW-ZX300」(実売価格 7万円前後)は、上級機と同じくDSDネイティブ再生(最大11.2MHz)が可能になり、リニアPCMも最大384kHz/32bitまでカバーする。こちらもMQAやAPEといった新フォーマットに対応している。

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NW-ZX300の背面。NFCマークはここに配置される。滑り止めを兼ねるシボ加工を施した樹脂でカバーされている
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右側面。ラウンドした形状に合わせた操作用ボタンを配置。サイズを変えることで手元を見ずに操作できるようにしている
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左側面にはmicroSDカードスロットがある
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底面にあるのはストラップの取り付け部とウォークマン専用端子

 まずピックアップしたいのは、タッチパネルを保護する前面ガラスに「マットガラス」を採用していること。マット仕上げのボディーと見た目の質感も揃っているし、一般的な光沢ガラスと違って反射が少なく見やすい。うれしいのは、指紋が付きにくく、指の滑りが良好で操作感にも優れることだ。

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上面の左右にバランス(4.4mm/5極)とアンバランス(3.5mm/3極ステレオミニ)の端子を装備している

 従来機の「NW-ZX100」との違いでは、3.5mmのアンバランス出力に加えて、4.4mmのバランス出力にも対応したことが大きな注目ポイントだろう。

 アンプ出力も、アンバランス接続時は50mW+50mW(16Ω)だが、バランス接続時は200mW+200mW(16Ω)の大出力となる。

 アルミブロックを切削加工した素材にアルマイト処理を加えたボディーは、上級機のWM1Z/WM1Aシリーズの思想を継承したもの。筐体の基板の間に金メッキを施した無酸素銅プレートを挟むことでインピーダンスを低減するなど、筐体の作り込みはかなり本格的。

 サイズ感や見た目のデザインこそ、ZX100と大きく変わらない印象だが、実際に手に持ってみると、その剛性感や質感などがWM1Z/WM1Aにぐっと近づいていることがわかる。

 もちろん、各所への高音質パーツの採用も徹底している。銅メッキを施した高音質抵抗の採用や、アンプ部の音声ラインからヘッドフォン端子まで低抵抗の無酸素銅ケーブルを使うなど、純度の高い再生を追求する。

 アンプ部への電力供給ラインでは、WM1Z/WM1Aと同じ容量500mFの電気二重層キャパシタを採用。アンプ部の左右およびプラス/マイナスが独立した4電源部には「高分子コンデンサー(FT CAP)」を使用し、さらに使用するフィルムコンデンサーの構造も改善するなど、パーツから見直して高音質化を徹底している。

 このほか、WM1A/WM1Zと同等の実力を持つ「S-Master HX」のICの基板への取り付けにソニー専用の高音質はんだを使っているほか、クロックとして44.1kHz系と48kHz系を独立させ、100MHz対応の低位相ノイズ水晶発振器を搭載。

 基板レイアウトをデジタル部とアナログ部を上下で分離するなど、数えだしたらキリがないほど音質にこだわった作りとなっている。

さらに細かくなったオーディオ設定

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WM-ZX300のホーム画面。基本的なデザインは前モデルと同様だが、上部に「DAC」のアイコンがある

 操作画面は基本的にZX100と大きく変わらないが、上部に「DAC」のアイコンが追加されている。ここを操作することでA40シリーズと同じくUSB DACとして使える。

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ヘッドフォン出力の設定では、ハイゲイン出力の選択が可能になっている
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ハイゲイン出力の設定は、アンバランス(ステレオミニ)とバランス出力で個別に設定できる

 出力設定では、インピーダンスの高いヘッドフォンなどに対応するため、ハイゲイン出力が選択できるようになっている。DSD再生設定のフィルター・ゲイン選択やDSDネイティブ再生の選択、USB出力時DSD再生方法の選択などは従来と同様。

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A40ではオン/オフのみのDSEE HX設定だが、ZX300では5つのモードが選べる
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Bluetooth設定では、再生品質や使用したいコーデックを選択できる

 高音質機能もてんこ盛りで、CD音源や圧縮音源をアップコンバートする「DSEE HX」は、音楽ジャンルによる5つのタイプを選択できる。

 グラフィックイコライザーによる音質調整、「DCフェーズリニアライザー」も6タイプが選択可能とカスタマイズ要素がかなり多い。このため、好みの設定を3つまで登録しておける「カスタム音質」が用意されている。

 Bluetooth出力時でも、LDAC(音質/接続優先)やapt-X、SBC(音質/接続優先)を選べるようになっているなど、細かい部分まで徹底してこだわっている。

A40を試聴! 上級機の自然な音の再現を受け継ぎながら
聴きやすく仕上げたバランスのいい音

 ここからはA40とZX300の試聴レビューを行なっていこう。まずはA40+付属のイヤフォンで音楽を聴いてみた。ノイズキャンセルの効き方はほどよい自然さで、室内だと空調のノイズなどがすっと収まる。

 耳が痛くなるような違和感もなく、気持ちよい静けさだ。音楽再生を止めると人の声などはわりと聴こえるが、音楽再生の邪魔になるようなにぎやかさではなく、適度に音量が抑えられた感じだ。

 ノイズキャンセルのオン/オフでの音質的な変化も少ないので、音楽再生中に使っていて違和感を感じることも少ない。このあたりは、長年のノイズキャンセル技術のたまものだろう。

 肝心の音質は、低音感も豊かで情報量も豊富となかなか出来がよい。従来機も音質の良さでは定評があったが、NW-A40となるとさらに中域の充実度が増して、聴き応えのあるものになったと感じる。

 アコースティックな楽器を使ったポップスでは、音色が自然でリアルな再現になるし、ボーカルもニュアンスが豊かだ。解像感が高いせいか、全体にすっきりとした音質だが、解像感を欲張って高域がキツくなるようなこともなく、電子楽器主体の元気なポップスもガチャガチャした感じにならず、ひとつひとつの音をストレートに聴かせてくれる。

 クラシックでは、楽器の音色と響きの余韻がきめ細かく描き出され、なかなかの再現だ。ピュアオーディオ志向の忠実度の高さを意識したものと思えるが、適度にメリハリを効かせて元気の良さを感じさせるうまいまとめ方になっている。

 手持ちのイヤフォンに交換すると、中低音の厚みや音のニュアンスがさらに増す。組み合わせるイヤフォンのグレードの高さもあるが、低音の力感や音の反応の良さが鈍ってしまうことがない。プレーヤーとしてのポテンシャルもなかなか優れているので、より音質的に優れたイヤフォンを組み合わせるのも楽しそうだ。

 音質を高めた同時に、聴いていて気持ちのよいバランスに仕上げられており、多くの人が楽しく使えるモデルと言える。この価格帯のプレーヤーとしては頭一つ抜け出た存在と言えるだろう。

上位機種にぐっと近づいたZX300
音の質感が大きく向上した

 続いてはNW-ZX300を試聴。(イヤフォンは付属しないので)手持ちのイヤフォンを使って試したが、パッと聴いてすぐに音質の良さがよくわかる。

 ナチュラルな音色で解像感も優秀。ZX100と比べると、かなり正統派のHi-Fiな音に近づいた印象だ。

 ボーカルは生々しい声で、力強さもしっかりと描き出す。このあたりはさすが中高級クラスの実力。低音もしっかりと伸びるだけでなく、量感を感じさせる豊かな響きまで堂々としたスケール感に再現される。

 クラシックでの細かな音の明瞭な描き分けや音場の広がりや奥行きもなかなかのもの。価格を考えたら不満などひとつも出てこない。

 これを、バランス接続に切り替えて聴いてみると、空間感の広がりや響きの豊かさがさらに増し、音の粒立ちの良さがさらに冴えてくる。

 ナチュラル志向の派手さのない音なので、パンチの効いた音に仕立ててあったZX100と比べると、ややおとなしい印象もあるのだが、中低域が充実し、しっかりとしたエネルギー感のある音なので、元気の良さや音の勢いなどは不足なく伝わる。

 WM1Z/WM1Aがさらに優れた実力を持つのは間違いないが、一回り大きなサイズは日常的に気軽に使うには少々大げさだ。

 しかし、本機のコンパクトさは実に手頃で、気軽に使えてしかも音質も本格的と、上級機以上に魅力を感じてしまう。価格はもちろんだが、サイズ感などでWM1Z/WM1Aを敬遠していた人はぜひとも注目してほしい。

Bluetoothのワイヤレスヘッドフォンがますます盛り上がる!?
完全ワイヤレスも登場!

 さて次回は、同時に発売された「MDR-1000X」後継のワイヤレスヘッドフォンとイヤフォンを紹介する。

 Bluetoothのワイヤレスヘッドフォンは今や注目アイテムのひとつだが、そこにしっかりと焦点をあてて魅力的なモデルを投入してきている。音質レビューもしっかり行なう。